STORY57 特別な日(1) ページ13
「これ、美味しい…！」
「良かった。Aさんの家でけーんで、食べ慣れてるかなとも思ったんですけど、やっぱりこんな日くらいはと思いやして。」
「気遣わなくていいのに。…でもすごく嬉しい。」
「喜んでくれたなら俺も嬉しいでさァ。」
彼はさっき見た黒い笑みじゃなくて、優しく笑った。
おしゃれに盛り付けられた料理とマッチして、本当にかっこいい。
数年前まで食べ慣れていたはずの料理も、彼と一緒だと全然違う。
何倍も美味しいし幸福だ。
「…話があるんでさァ。長くなるんですけど、聞いてくれやすか？」
「うん、もちろんよ。どうしたの？」
「あー…うん。お恥ずかしい話、俺女性と付き合ったの初めてなんでさァ…職業柄、本当はAさんのことも諦めるつもりでした。」
総悟君は少し目線を私から外し、罰が悪そうに、そして照れ臭そうにぽつりぽつりと話す。
女性と付き合ったのことがなかったと聞いて私は目を見開いた。
「初めて、なの？ あんなにスマートに私をエスコートしてくれて、いっぱい手慣れてる感じだったのに…？」
「心臓ばくばくしながら頑張ったんでさァ。…言わせんな。」
「ふふ、そっか。…そっかぁ。」
本当は少し不安だった。
私が初めてなように、総悟君も初めてで嬉しい。
同じなことがこんなにも嬉しい。
「…嬉しそうだな。」
「ふふ、まあね。」
「それ、で…本当はこれからたくさんデートして、月日を重ねるのが普通なんだと思う。…でも。」
静かに話し始めた総悟君の話を、私も静かに聞く。
「俺は、もうAさん以外ありえねェ。アンタ以外見る予定ねーから。…俺の隣で永遠に笑っててくれやせんか。」
「え…。」
目の前に差し出された、光るソレは。
今まで見たどんなものより光っていて、なのに目の前が歪んで。
「ふ、泣かねーでくだせェ。」
総悟君は困ったように笑った。
「気、早ェよな。本当はこんなはずじゃなかったんだ。初めは諦めるはずだったのに、アンタが俺の領域に土足で踏み込んでくるから。」
アンタが悪いんでィ。
そう言う彼の声色は決して責め立てるようなものじゃない。
仕方ないなと諦めたような、呆れたような。
そして許すような声だ。
「Aさんは泣いた顔も可愛いが、笑った顔のが素敵でさァ。…俺はアンタにどうしようもなく惚れてる。もう、元には戻れねェ。」
だが今ならアンタは引き返せる、なんて。
私のこと舐めすぎじゃない？
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たいる(プロフ) - れれんさん» ありがとうございます！コメントくださり嬉しいです。 ご期待に添えるよう励みます！ (2021年3月20日 16時) (
レス) id: 14bca84003 (このIDを非表示/違反報告)
れれん - 初めまして。完結おめでとうございます！番外編も楽しみにしています！ (2021年3月18日 19時) (レス) id: 495a38581f (このIDを非表示/違反報告)
たいる(プロフ) - みけさん» ありがとうございます…！初めてコメントを頂き、本当に嬉しいです！人物像にこだわって書いていたので、夢主さんの美しさをわかって頂いて本当に感無量です…！できる限り早めの更新を心がけますので、これからもよろしくお願いします！！ (2021年3月6日 1時) (レス) id: 14bca84003 (このIDを非表示/違反報告)
みけ(プロフ) - とっても美しい人物像をお作りになりますね…！たいるさんのきめ細やかな心がなせる技だと思います！一気読みしてしまいました…！更新楽しみにしてます！あ、でもご無理はなさらず！ (2021年3月5日 0時) (レス) id: 44e1804c7a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たいる | 作成日時：2021年2月21日 23時
