STORY33 本当の家族 ページ35
「…店のことはいいから、いつでも行きなさい。…それで、いつかまた元気な顔を見せて?」
「…っう…はいっ…!」
「貴方みたいな可愛い子が、うちに来てくれて嬉しかったわ。私たちに子どもはいないから、本当の娘…いえ、孫ね。孫みたいに思ってるわ。」
涙が、止まらない。
私の方がよくしてもらってる。
助けてもらっているのはいつも私だ。
お世話になったのも私。
すごく、すごく感謝している。
私だって、本当の家族みたいに思ってる。
でも口から漏れるのは嗚咽ばかり。
…止まれ、涙止まって。
お願い。
話がしたいの。
「うぐ…っう…はっ…。」
そんな私を、おばあちゃんはただ抱きしめてくれ、おじいちゃんは柔らかく笑った。
・
・
「…見苦しいところをお見せしました。」
あれから完全に涙が止まったのは1時間後。
さっきも泣いたのに、よく出る涙だ。
鏡を見なくてもわかる腫れた目。
こんな歳にもなって…恥ずかしい。
なんとなく伏し目がちになる。
「あらあら、別嬪さんが台無しね。ふふ、待ってて今タオル持ってきますからね。」
「ありがとうございます…。」
そうだ、言えなかったこと。
伝えなければ。
「私も、本当の家族みたいに思ってます。いつも、ありがとうございます。」
血の繋がりなんかなくても、私たちは家族だ。
おばあちゃんの明るさには元気を貰っているし、おじいちゃんの冷静さにはいつも助かっている。
2人のお茶目なところも大好きだ。
「嬉しいわ。」
「実家で嫌なことでもあったら、いつでも帰ってきな。俺たちゃいつでも団子屋開いて待ってる。」
「はい!」
2人の優しいところも、大好きだ。
おばあちゃんはいつも通りの素敵な笑顔だった。
おじいちゃんは無愛想なことも多いのに…少しだけ口角を上げ、目尻の下がった綺麗な笑顔だった。
…夫婦はよく似るって言うからね。
最後までごちそうさまでした。なんてね。
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たいる(プロフ) - わかさん» こっちにもコメントくださってたんですね!笑ありがとうございます。笑っていただけて良かったです笑笑 (2021年7月11日 17時) (レス) id: 14bca84003 (このIDを非表示/違反報告)
わか - ミョウバンは笑った!!笑笑 (2021年7月7日 21時) (レス) id: 44294a6bf9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たいる | 作成日時:2021年1月8日 0時