STORY02 出会い(2) ページ4
___姉上。
咄嗟に出た言葉にしまったと思った。
せめて心のうちに秘めておけよ。
彼女は驚いたように顔を上げ、まん丸の目をさらに丸くしてこちらを見た。
やがて驚きから不思議そうな顔に変化した。
キョトンと丸い目をこちらに向ける。
そりゃそうだ。
俺の姉上は既に亡くなっているし、何より瞳の色が違った。
姉上は俺と同じ赤い目をしていたが、彼女は水色の目を持っていた。
別人だ。
しかも似ているのは雰囲気と髪色だけ。
澄んだアクアマリンの瞳に吸い込まれそうになりながらも、とりあえず何か言わなければと口を開く。
「あーすいやせん。その…。」
つい出てしまった言葉の言い訳を必死に探していると、クスクス…と彼女は笑った。
「そんなに似ていましたか?」
そう言って彼女は悪戯に笑った。
…あァ、こんな風にも笑うのか。
呑気にそんなことを考えた。
からかわれているのは理解していたが、それよりも彼女の笑顔が頭にこびりついて離れてくれない。
先程まで優美に笑みを浮かべてた彼女が、悪戯っ子のように笑うだけで、心臓が痛かった。
いつもなら喧嘩を売られると倍以上にして返してやるが、姉上に似た女にそんな気起きるはずもねェ。
何より恥ずかしくて仕方なく、とにかくその場から去ってしまいたかった。
「雰囲気がそっくりで間違えやした。」
そう、俺には珍しい愛想笑いをした。
気がついたら、会釈をして断るはずだったチラシを彼女の手から1枚奪い取り、屯所に帰っていた。
…何だか今日は疲れた。
______
___
あの後団子屋のチラシを土方に見られ、サボりがバレた。
いつものようにくどくどと怒られた。
もちろん聞き流していたが、バレたときにはさらに怒られたのは言うまでもない。
「ったく土方のヤローは説教が長いんでィ。」
ぶつぶつ文句を言いながら、今度奴のマヨネーズに下剤でも仕込んでおこうと考えることで苛立ちをおさめる。
部屋に戻り、先ほど受け取ったチラシを眺める。
普段なら読まずにすぐ捨てるチラシだったが、今回は訳が違った。
姉上に雰囲気がそっくりなだけなのに、どうしても忘れられない。
「俺ァそんなにシスコンだったかねィ…。」
まあでも、もう会うことはないだろう。
姉上と呼んでしまうなんて失態を犯した女に、どうやってもう一度会えようか。
いや、会えない。
あれ反語?
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たいる(プロフ) - わかさん» こっちにもコメントくださってたんですね!笑ありがとうございます。笑っていただけて良かったです笑笑 (2021年7月11日 17時) (レス) id: 14bca84003 (このIDを非表示/違反報告)
わか - ミョウバンは笑った!!笑笑 (2021年7月7日 21時) (レス) id: 44294a6bf9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たいる | 作成日時:2021年1月8日 0時