太虚に眠る夜【ワールドトリガー】 (ページ1)

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プロローグページ1

「はあ……はあ……はあ……」

肌にへばりついた汗が気持ち悪い。気づけば教室には誰もおらず、周囲には倒れた椅子と机しかなか

った。鉄製のパイプとささくれの多い座面。チクチクと私を刺してくる。その時、教室の中に微かな

空気が舞い込んだ。誰か来る。

「大石！」

大柄な体育の先生が教室の外から私の苗字を叫ぶ。空気の揺れが私の産毛を刺激した。嫌だ。嫌い。

気持ち悪い。

「こっち来んなよ。もう全部、うるさいんだよ！」

初めて吐き出した不満。誰も分かってくれない。どうせ誰も分かってくれない。人が動く度に感じる

刺激。微妙な力加減がくすぐったくてイライラする。大嫌いな制服。カサカサする感じが気に入らな

い。なのになんで『我慢しろ』『ワガママを言うな』『異常だ』と口を揃えて。

「何も知らないくせに！」

今まで抱えてた気持ちが一気に弾けていくのを感じる。

他の先生達が駆けつけてきたその時だった。

空が黒く染まる。いや、穴が開く。出てきたのは見たこともない古代の生物のような何か。

ふと突然に、この世界が変わる気配がした。

世に言う大規模侵攻。

その日を境にして私ーー大石華音は解放された。