弱虫で、強虫な。 2【JWEST】 (ページ10)

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55話ページ10

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事務所に着くと大部屋に通される。

今日の全国ツアーの打ち合わせ。

初めての全国ツアーで気持ちが引き締まる。

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堅苦しい空気の中淡々と打ち合わせが進んでいき

望の意見で、シンメでJr.時代の曲を歌うことになった。

シンメということは…

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濵「 Aと」

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めっちゃ嬉しかった。

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Aと2人で歌うことなんかJr.の時以来やし、

曲合わせとかで一緒におる時間が増えるということ。

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ニヤける顔を隠すのが精一杯やった。

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でも嬉しかったのは俺だけで、

Aの顔を見ると暗い顔をしとった。

その顔を見るとチクリと胸の奥が痛む。

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俺と歌うのが嫌なんかな？

他の人が良かったんかな？

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マイナスの考えだけが頭の中でぐるぐると回る。

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…あかん、マイナスの考えは辞めよ。

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せっかく久しぶりに一緒に歌えるんや。

楽しまな損やしな。

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そう思って精一杯の笑顔でAに

「頑張ろな」と声をかけた。

Aはそんな俺に「うん」と

ぎこちない笑顔やったけど笑ってくれた。

ほんの些細なことやけどそれが嬉しかった。

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スタッフさんがおらへんくなると

他のメンバーに「大丈夫なん？」と言われた。

何の心配か分からんけど

「大丈夫」とだけ返事をして資料に目を通す。

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Aと歌うのは『 Stay Gold 』

BOYSの時の曲で、よく3人で歌ってた思い出の曲。

この曲をもう一度ステージで歌えるのが嬉しかった。

3人で歌ってたあの日々を思い出すと

懐かしくなって自然と笑みが溢れる。

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正直自分でも分かっとるんよ。

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早くいじめをやめなあかんこと。

表面上だけ仲のええ振りをすることが

ずるいことを。

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Aが苦しそうな顔、

悲しそうな顔をするのは全部俺らのせい。

…俺がAを助けられれば

昔みたいに笑ってくれるかもしれんのに。

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出来るのにせえへん俺はほんまにずるい。

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めちゃめちゃ弱虫や。

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