光と闇に、二つの世界の胎動２【五条悟】 (ページ24)

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24.光が見えない(五条悟) ページ24

あの血溜まりに佇むAを見てからだ。
Aの姿をその目に映すと、あいつの影を見るようだった。

今のAがいるのはあいつが救ったから。
間接的にでもAに新しい世界を開いたのはあの男だった。

腹の中で一緒に育って、あの地下でどれだけ一緒にいても、近くにいても。Aを救ったのは紛れもないあの男。

いつかのどろどろとした感情が胸を締め付ける。湧き出るように体の中に溜まっていく。Aを見る度にその感情はとどまるところを知らないように、俺の中に濁って溜まっていく。その感情はAにとって、呪いになると分かっていたはずなのに。

Aの中に生き続けるあの男。

天内を殺したのに。
Aの中であの男は悪と同時に光り輝く救世主であった。

だから、Aはあいつから目が逸らせない。

またどろり、と感情が湧き出る。

夜、部屋の前に人の気配を感じた。
その呪力はAのものだった。ただドアの前に佇んで、入ろうとはしない。

そのままAは踵を返して部屋に戻った。俺の部屋に、入ることはなかった。

あの日、あの茈を手に入れた日。
瞳に映すAの顔は怯えていた。この俺に怯えていたのだ。

朝を迎えて、またAの姿を捉える。白い肌、艶やかな黒髪。桜色の唇。闇をまとったような、濡れた黒い瞳。

その目の先にいるのは、本当に俺なのか。
Aを助けたあいつがいるんじゃないか。

また、こいつが襲われたとして、
その時に思い出すのは俺じゃなくてあいつなんじゃないか。

『みてるよ、これからも。一人の女としてお前を見てる』

『お前が心の底から望むまで、お前を抱かない』

いつになったら、見てくれるのか、
いつになったら、俺を受け入れてくれるのか

その瞳の先にあいつがいるくらいなら。

それならもう、襲われないようにAを囲えばいい。
だれとも関わらない、俺だけがいる世界で。

「悟？」

Aが俺の名前を呼んだ。その声に、俺は息を飲んだ。
黒い瞳には、俺が映り込んでいる。

何を考えていた。

またAから世界を奪って、自分だけを見せて。
無理矢理その胎を開かせるとでもしたかったのか。

だめだ、そんなこと。
あの一夜、約束しただろう。忘れるな。

どろり、また黒い感情が首を絞める。