初彼（続編） 6 (ページ41)

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291「一夜の出来事II」藤ヶ谷side ページ41

…このままキスすることだってできた。

…好きだって、自分の気持ちを伝えることだってできた。

…玉はいない。

…どうすることだってできた。

…自分次第で。

だけど、俺は Aちゃんが寝ている間にそっと寝室を後にし、玉の家をも後にした。

〝またね〟と、眠るAちゃんの頭を撫でて。

……………………………

きっと、ひまりがこれを聞いたら、俺のことを、真面目かっ！とか、好青年かっ！ってツッコンで笑うだろう。

だけど、俺は笑われてもいいんだ。

なぜなら、Aちゃんとの恋に、とことん真面目で真っ直ぐでいたいから。

Aちゃんは、俺が忘れかけていた、昔に起き忘れてきた大切な気持ちを思い出させてくれる。

駆け引きなんかじゃ無い、損得なんかじゃ無い、人を真っ直ぐに愛する気持ちを…。

だから俺は決めたんだ。

…今はAちゃんが体調が全快じゃ無い中、看病を理由に近づいて、手を出したり、自分の気持ちを伝える事はしたく無いなって思った。

それはAちゃんが一番嫌がる事だから。

悲しむ顔が目に浮かぶから。

…いや、それだけじゃ無い、俺は何よりもフェアでいたいと思ったんだ。

私心が差し挟まれず、公明正大でいたいっていうか…。

それは、Aちゃんが体調不良という弱味を握っての一方的な力任せでは無く。

玉が不在の隙に代理で看病だと卑怯で姑息な手を使う事では無く。

Aちゃんが元気になって、タイミングがあれば…

その時に正々堂々と自分の気持ちを伝えようって。

真っ直ぐに。

…………………………………

…………………………………

(ひまり)「私、そういう太輔の真面目な所、好きだよっ！」

(藤ヶ谷)「あははは(笑)なんか遠回しにバカにされてる感、満載だけどね(笑)」

(ひまり)「違うよ～！真剣に。」

そう言うと、ひまりは俺にも水を取ってくれて隣に座る。

(ひまり)「イイ事あるよ。きっと。」

優しい目で微笑むひまり。

(藤ヶ谷)「だといいね～」

(ひまり)「恋の神様は、真面目で優しい太輔を見放したりしないよ。」

(藤ヶ谷)「ふふふ。たまにはイイ事言うじゃん(笑)」

(ひまり)「あははは(笑)たまにはね(笑)」