その素顔、俺に見せろ【宮侑】

将来設計 ページ12

そない揺さぶって、どうするつもりなんやろ。昔からそうや。ずっとずっと、俺より余裕がないんに、俺の心を鷲掴んで、右へ左へ揺らす。

もう散々揺らされてそん度にAを好きになって、更に愛して。ずっと、もっと、奥深くまで沈みこんでいく。






「…そろそろ、こども、欲しいんやけど」






Aをソファに押し付けたままに、耳元で囁くと分かりやすくAは息を飲んだ。声音はこれでもかっちゅうくらい静寂やってんに、心の奥に蔓延った本能は隠しきれんで、吐きでた息は熱かった。

顔の両脇に置いた手に体重をかけると、ソファが沈む。自分がどんな顔しとるかも分からんまま、口を結んで見下ろすとAは戸惑いの視線を向けた。


「侑…」
「もう結婚して大体一年や。別に急いどる訳やないけど、Aとのこどもが欲しくて堪らん。子育てしたいし、なによりもっとAと家族になりたいねん」


ずっと思っとった事を全部話した。前は本音を話すことに抵抗があったし、なにより気恥ずかしくて出来へんかったけど、今はちゃう。

嘘もつかんって決めたし、どんな小さな事でも思った事は伝えるようにしとる。

じっ、と揺れる瞳を見つめて返事を待っとると、Aはふいと視線を逸らしてしもた。真逆の反応に、心が痛む。


(…やっぱり言うのは簡単なんやろな。産むの俺やないし。むっちゃ辛くて痛いって聞くし)


正直、言うまで悩んでしもた。おかんから「出産はホンマに大変やから、Aちゃんの意見を最優先するんやで」と口酸っぱく聞かされて来たから、男の俺から言うんはだいぶ躊躇われた。

やけど、親子連れ見かける度に「羨ましいなぁ」って思っとったんは事実。Aが前に「将来こども欲しいね」って照れくさそうに言っとったけど、それ以来こどもの話が出んから不安になってしもたのもある。

内心ドギマギしながら待っとると「…い、今は駄目…」と桃色の唇が呟く。


「え？」
「…一年の担任持ったばっかりだから、あと、一年後なら、皆二年になるし。私も落ち着くと思う…から」


恥じらいながらモジモジと言葉を紡ぐAに、一瞬呆気に取られる。それからその姿がホンマにかわえぇことに気づいて、頬が赤くなった。



「…ホンマ？俺とのこども、欲しい？」
「欲しいに決まってる。本当は今にでも欲しい、けど…」



かぁあ、と頬を赤くするAに、心臓が撃ち抜かれた感覚に陥る。下がるまで下がった気分は上場。心做しか脳内に花畑が広がる。

何度でも→←触れる熱

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