その能面、俺が剥がしたる【宮侑、宮治】

えぇことはえぇことで帰ってくる ページ35

練習試合の帰り、スマホを見ると家族グループトークに「どっちでもいいから買い物してきて」というメッセージと買うものが羅列してあった。俺がパスするより先にサムが「侑が行くて」とメッセージを送る。


「なんでや！」
「いや今日見たいテレビあんねん」
「知るか！俺やってはよ帰りたいわ！」


スマホ片手にお互いを睨み合っとるとピコンと軽快な音。「じゃあ侑お願い」と届いたメッセージに俺は黙り込む。

「明日ジュース奢れや」
「ジュースぐらいえぇで。俺優しいからな」
「やっぱ学食の焼肉弁当や！」

ギャイギャイと言い合いをしてバス停で降りるなり、サムは勢いよく走り出した。逃げるが勝ちか、彼奴。


「…しゃあないなぁ」


エナメルバッグ背負い直して、俺はおばちゃんの姿がチラホラあるスーパーに走り込んだ。









「ちょっと！そこのお兄ちゃん！」


レジ袋ぶら下げてスーパー出ると、チョイチョイと招かれる。

「なんですか」
「今、買い物した人にサービスでやってんのや！１回出来るで！」

おばちゃんの後ろには長テーブル。そしてその上にはガラポンが置いてあった。下の受け皿には下位賞やろう白玉がこれでもかっちゅうほど落ちとる。チラホラ赤や緑、青が出とる。


「やる！えぇもん当てたるわ」
「おっ、その意気や！」


レシートを渡して腕まくりをし、ガラポンをガラガラと回し始める。だんだん速度を落としていくと、コロリと玉が転がり落ちた。

「おっ」
「あ、映画のペアチケットや！3番目の賞やで」

はい、と渡されたチケットの中から選んで今話題のアクションものを受け取る。3番という割にはしょぼい気がして「チケットかいな」と呟くと「何言うてん」と肩を叩かれる。


「アンタ、イケメンやから彼女の一人や二人いるやろ！行ってきいってき！」


その勢いに流されて俺はスーパーを後にした。片手にはレジ袋。片手にはペアの映画チケット。



「えぇことしたからえぇこと帰ってきたんや」



これはきっとそうや。神さんが俺にくれたプレゼントや。普段バレー頑張っとるしな、と思いながらポケットに突っ込み、空を見上げる。


「彼女、か…」


おばちゃんの言葉が反響して呟くと、一人真っ先に顔が思い浮かんだ。いやいやと首を振りつつ、ポケットに突っ込んだチケットを取り出して眺める。


「誘ってみるか」


誘ったらどないな顔すんねやろ。そう思いながら、今度はそっとチケットをバッグにしまい込んだ。

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