弱虫 ページ25
珍しく動揺した目と目が合う。一瞬、彼の得意のはずの笑顔が固まった。
(うそ、なんでホークスが…)
焦凍くんと出掛けるというのはなんだか言いずらかったから、今日は友人と出掛けるという旨を伝えていた。
(これじゃ、誤解されちゃう──────)
ずん、と一気に身体が重くなって、心臓がバクバクと速く波を打っていく。思考停止した頭で必死に言葉を探していると、それより先に表情を取り戻したホークスが口を開いた。
「やぁ！この間トークショーに来てくれた子だよね！こんばんは」
ぱっ、と手を広げておどけてみせるホークスに、心臓がどくんと嫌な音を立てた。
「こんばんは…。は、はい…。偶然会うなんて」
居心地の悪さを感じながら下手くそな作り笑いを浮かべる私から目を逸らして焦凍くんに「世間って狭いなぁ、ショートくん知り合い？」なんて切り替えている。私たちのやり取りを見ていた焦凍くんは、ホークスの台詞にハッとしたように言葉を発した。
「はい、俺の大切な人です」
サラりととんだ勘違いを生みそうな発言に内心悲鳴を上げる。慌てて「焦凍くん」と袖を引くと「…駄目ですか？」なんて眉を下げるから何も言えなかった。
「…へぇ、そうなんだ」
何処か重みを増したホークスの声音に顔を上げると、仮面を貼り付けたような笑顔を浮かべていた。そんなホークスの表情に、息がひゅっと詰まった所で、焦凍くんが律儀に頭を下げる。
「今日はよろしくお願いします、ホークス」
「いやいやいいよ。エンデヴァーさんに頼まれたら断れないし。真逆ショートくんが方向音痴とはね」
じゃ、遅れちゃうし行こっか。と踵を返すホークスに思わず手を伸ばすも、その手が届く事は無かったし、届かそうとしなかった。
「じゃあAさん。今日はありがとうございました」
気をつけて、と微笑む焦凍くんになんとか笑い返すと、彼も背を向けて往来に紛れて行った。
「…どうしよう…」
振り返していた手は自然と垂れ下がり、私は重い息を吐いた。周りでは「何あの子？羨ましい」「ショートとホークスに囲まれてどういう関係？」と女性の噂話が飛び交っている。
去り際、手を伸ばして「違うの」って言えば良かった。
周りの目を気にして、偽りの言葉しか言えないなんて。
ホークスの心が傷つく事より、自分の身を守ることを、選択してしまった。
「…ごめん、啓悟…」
自分の不甲斐なさに、自然と涙が零れていた。
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おちゃきち(プロフ) - イッキ読みさせていただきました！あとがきにある、ホークスの恋愛観、めっちゃストンときました。凄く記憶に残るとっても濃くて良い作品だなと思いました。素敵な作品を書いてくださってありがとうございました…😭 (2021年10月15日 12時) (
レス) @page48 id: 78dc48b955 (このIDを非表示/違反報告)
かよ(プロフ) - めっちゃくちゃ面白かったです！！！最高です！！本当にありがとうござます！！これからも応援してます！ (2020年7月5日 14時) (レス) id: a82fd268db (このIDを非表示/違反報告)
紅波 - もう既に書き終わっている状態で一気読みしました。もう最高です。どこからこんなに素敵な小説が出てくるのか知りたいです...。応援してます！ (2020年6月5日 8時) (レス) id: 2ce5490af6 (このIDを非表示/違反報告)
アオ(プロフ) - 少し覗いていない間に完結していて驚きました。この2人には一生2人で飛んでいてほしいですね。(クルーズ船に乗ってる人になりたい)何はともあれ(？)完結おめでとうございます！素敵な作品をありがとうございました！ (2020年5月17日 16時) (レス) id: eee0ca23b5 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 花帆さん» コメントありがとうございます！そんな風に言って頂けて嬉しいです！ホークスをとびきり幸せにできて私も大満足です…！閲覧ありがとうございました！ (2020年4月28日 8時) (レス) id: 0b00b944d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あろま
| 作成日時：2020年1月2日 22時
