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いつもは通り過ぎる花屋の前で足を止める。見慣れた菊や百合、西洋由来の薔薇や、最近輸入されたばかりの花車などが生けてある。
その中で赤黒い花弁を幾重にも持つ花を見つけた。前に座り込んでじっと見つめれば見つめるほど、まるでAの様な可憐さと優美さを兼ね備えた花である。
「なんだい坊や、その花欲しいのか？」
花屋の店主が坊や、なんて呼びかけてきた。気前がいいのは分かるが、流石に坊や扱いされるのはいい気分では無い。
「うん、この花なんて言うの？」
しかしここで反応していては真の坊やになってしまう。動じずに問うと店主は僕の隣にしゃがみ込んだ。
「この花はな──────」
天竺牡丹、海外では"だりあ"と呼ばれているらしい、Aにピッタリだと思ったその花を、1輪買って装飾してもらった。
「…喜んでくれるかな」
この間Aに作ってもらった組紐が静かに揺れる。僕の瞳を映したような組紐の色にふいに頬が緩む。
いつものように組紐屋へ向かうと、誰かの話し声が聞こえてきた。
「いつになったら俺の気持ちに応えてくれるんだ？」
「前からお話しているように、私は貴方と、そういった関係には…」
会話の内容を聞いてずん、と胸が黒く霞がかる。気配を殺して近づけば、商人がAに言い寄っていた。
「なぁ、A」
「…っ、嫌です、来ないでください！」
男がAの腕を掴む──────それを見て、ピキ。
まるでガラスにヒビが入ったように、僕の中で激情と憎悪がその姿を現した。
「──────その小汚い手で、Aに触るな」
男の腕を掴むと男は「あ？」と睨みを聞かせてきた。ぐ、と容赦なく力を込めると骨がミシミシと悲鳴を上げる。
「…ってぇえ！んだこの餓鬼が…！」
感情任せに拳を振り上げる男の鳩尾に拳をかます。すると男はかはっと蹲る。
「消えてくんない？Aの前から」
そう言うと男は顔をさぁあっと青くして捨て台詞を言わずに足をもつれさせながら掛けて行った。
安否を確認しようと振り向くと、身を縮めたAが呆然と立ち尽くしている。何も言う気配がない彼女が心配になって「ねぇ、大丈夫だった？」と声を掛けるとビクリと肩を揺らした。
「…あ、ありがとう、時透くん」
「いいよ、きっともう彼奴は来ない。安心していいよ」
まだ何処か怯えた様子のAに「ね？」と微笑みかけると、安堵したように微笑み返した。
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あろま(プロフ) - 謎の桃さん» コメントありがとうございます！好きと言って頂けて嬉しいです！続編の方も是非ごらんください！ (2020年1月5日 17時) (
レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
謎の桃 - ぐっ…好きです…（死 (2020年1月3日 11時) (レス) id: 54222cb971 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - あろまさん» 分かりました。大丈夫です。 (2019年11月1日 9時) (レス) id: 87339a530e (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 零奈さん» リクエストありがとうございます！実弥ですね！実弥らしいお話ですね…！精一杯書きます！ (2019年10月31日 22時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 美桜さん» リクエストありがとうございます！煉獄さんのリクエスト嬉しいです！ですがすみません、夢主が柱という設定を普通の一般隊士にしたいです。ご了承ください…！ (2019年10月31日 22時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あろま
| 作成日時：2019年9月25日 17時
