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おはぎをもしゃり、もしゃりと食べる風柱様の前に座る。
もう既に3つ平らげた風柱様とは対照的に、私は緊張で箸が震えてまだ一つも食べ終わらない。
(な、なんですかこの状況は…)
頭がぐるぐる回る。風柱様に出会った私が慌てていると店主さんが「あんたら知り合いなのかい?だったらここで食べておいきよ」と促してくれた所以である。
(まさか風柱様と逢引のような事が出来るなんて…)
恐れ多くて表情を見ることが出来なくて、私はずっと俯いていた。風柱様は箸を置くと「おィ」と声をかけてくる。
「はっ、はい!」
「無理してんなら帰っていい。俺は別に気にしねェからよォ」
突然の発言に私は首を傾げた。俯かせていた顔を上げると、風柱様はちょっと目を丸くしてからふいと逸らした。
「俺が怖いんだろォ、この間も泣かせちまったしなァ」
「え…っ」
風柱様はまるで"合わせる顔がない"というようにそう言った。表情を伺おうとしても、そっぽを向いた顔を見ることが出来ない。
そこで馬鹿な私は気づいた。私がずっと俯いていたために、風柱様を怖がっていると思われてしまったのだ。
「半ば付き合わせちまったみてェなもんだ。代金はいいから──────」
「き、緊張しているのです」
また声が裏返ってしまった。どうしてこう大事な場面で上がってしまうんだろう。
一世一代の機会だ。きっと臆病でどうしようもない私のために、神様が与えてくださった宝物。
"伝えなくては、言うのだA"
生まれて初めて、自分の背中を押した。
「私なぞが風柱様とお茶をすることが出来るなんて…、幸せで、恐れ多いのです」
どんどん声が小さくなってしまって、ちゃんと聞こえたのかと不安になる、けれど飛び出した想いも、言葉も、もう後には戻れないところまで来てしまった。
「この間泣いてしまったのは、私の不甲斐なさです。風柱様は、私を元気づけるためにみすず飴を下さいました。…すごく嬉しくて、美味しかったです」
伝えたいことなんて、ありすぎた。隠になって初めての任務で周りに潜む鬼の恐怖に打ちひしがれそうな私を、励ましてくださったことも。
変態な隠の男に迫られていたときに助けて下さったことも。
「…そうかよォ」
ぼそり、小さな呟きに顔を上げると──────風柱様の顔が、ほんのりと赤く色づいていた。
リクエストを見ていて思うのですが、皆さん実弥が大好きなんですね!(私も好きです)
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あろま(プロフ) - 謎の桃さん» コメントありがとうございます!好きと言って頂けて嬉しいです!続編の方も是非ごらんください! (2020年1月5日 17時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
謎の桃 - ぐっ…好きです…(死 (2020年1月3日 11時) (レス) id: 54222cb971 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - あろまさん» 分かりました。大丈夫です。 (2019年11月1日 9時) (レス) id: 87339a530e (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 零奈さん» リクエストありがとうございます!実弥ですね!実弥らしいお話ですね…!精一杯書きます! (2019年10月31日 22時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 美桜さん» リクエストありがとうございます!煉獄さんのリクエスト嬉しいです!ですがすみません、夢主が柱という設定を普通の一般隊士にしたいです。ご了承ください…! (2019年10月31日 22時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あろま | 作成日時:2019年9月25日 17時