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支度を整え、久しぶりだと言わんばかりに刀を握る実弥に歩み寄る。
「…実弥」
「あぁ、世話になったなァ」
実弥は刀を鞘に納めるとくしゃりと笑った。初めて見る心からの笑顔に、胸が握り潰されそうだ。
「間違ってたら悪いが、最後だから言わせてもらう」
頭に疑問符を浮かべる私の腕を取り、実弥は勢いよく捲った。
浴衣で隠していた腕の包帯が一気に晒される。勿論それは未だに治らない、鱗を剥いだ場所だ。
「…お前、自分を犠牲にして俺を看てたんだろォ」
見事図星だった私は口を噤んだ。実弥は嘘はつかせない、というように少しも目を離さないでいる。
「…A、お前は何者だ？」
あぁ、もう隠せない。そう悟った私は彼から距離を取る。
「…怖がらないでくれ。お願いだ」
それはもう呟きというより懇願であった。怖がらないで。逃げないで。そんな、強き姿を持つ龍としては情けない感情。
もう私は龍と呼ぶには些か適切では無かった。半分、不死川実弥という男に想いを寄せる1人の女になってしまったのだ。
ぐ、と力を込めると身体が変化していく。静かに目を開けると実弥は目を見開いていた。
「…私は龍なんだ。…私が怖いか？実弥」
人間の姿では難なく近づけたのに、この姿で近づくのが怖かった。もしかしたら傷つけてしまうかもしれない。
小さく震える私に歩み寄ると、実弥は私の硬い頬を両手で包んだ。
「怖いなんてあるかよォ。いつも鬼と戦ってるんだぞォ」
「…あぁ」
「お前が龍でも、お前はお前だァ。俺を助けてくれた…1人の女だァ」
その言葉に、涙が零れてしまった。双眸から零れる銀色の涙を、実弥は優しく拭う。
「龍でも泣くんだなァ」
「馬鹿者、感情くらいある」
カラカラと笑う実弥は私の頭を腕で包み込んだ。まるで幼子のように彼の身体に擦り寄ると実弥は尚更抱く力を強くした。
「もう、行くのだろう？…これを渡したいと思っていた」
名残惜しくも離れて私はペンダントを取り出した。世にも珍しい宝石のついた、銀のペンダントだ。
「きっと実弥を守ってくれる。お守りだ」
「…ありがとよォ、A」
掌に渡すと実弥は握り締めてから付けた。
「鬼なぞに負けるなよ」
「わかってらァ。…行ってくる」
さようなら、なんて言葉は要らなかった。実弥が去った後には、別れの悲しみより確かな愛情が残っていた。
紫苑：遠方にある人を想う
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あろま(プロフ) - 謎の桃さん» コメントありがとうございます！好きと言って頂けて嬉しいです！続編の方も是非ごらんください！ (2020年1月5日 17時) (
レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
謎の桃 - ぐっ…好きです…（死 (2020年1月3日 11時) (レス) id: 54222cb971 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - あろまさん» 分かりました。大丈夫です。 (2019年11月1日 9時) (レス) id: 87339a530e (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 零奈さん» リクエストありがとうございます！実弥ですね！実弥らしいお話ですね…！精一杯書きます！ (2019年10月31日 22時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 美桜さん» リクエストありがとうございます！煉獄さんのリクエスト嬉しいです！ですがすみません、夢主が柱という設定を普通の一般隊士にしたいです。ご了承ください…！ (2019年10月31日 22時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あろま
| 作成日時：2019年9月25日 17時
