雨と"煉獄杏寿郎" ページ10
家系図は自分と弟の名前までしっかり書きたされているもので、確認する限り間違いはない。
「俺はこの人の名前を"受け継いだ"のか…」
杏寿郎はこのときまで名前を受け継いだことを知らなかった。煉獄家では何十年に1度生まれた子供が祖先の名前を受け継ぐことがあるのだ。
杏寿郎は探した──────"煉獄杏寿郎"という、自分と同じ名前を。
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【煉獄杏寿郎】
──年、5月10日生まれ。享年20歳。
──代目炎柱。尚、炎柱は彼の代で終わりを迎える。彼は最後の炎柱である。
元炎柱の槇寿郎と瑠火を両親に持ち、千寿郎という弟がいる。
鬼殺隊入隊後──年で炎柱の座に就く。──年──月──日に起きた無限列車襲撃事件によって命を落とす。
十二鬼月である上弦の参・猗窩座という鬼に破れるも、乗客200人を守り抜いた彼の死は名誉あるものであった。
尚、未婚の為直系の子孫はいない。
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杏寿郎は言葉を失った。
「……俺と誕生日が同じじゃないか」
そう、杏寿郎もまた5月10日生まれであった。同じ名前、同じ誕生日。
これが偶然といえるのだろうか?悪寒にも似た感覚がぞわりと背筋を駆け上がる。
そして、彼が死んだ日。それも杏寿郎に衝撃を与えるには充分だった。
──────雨の日。女に会うことの出来る、唯一の日である。
「一体どういう事なんだ」
杏寿郎は脳味噌がガクガクと無造作に揺すぶられるような頭痛を覚えた。
そうだ、最近何故か鬼の事を調べるとき、煉獄家の書物を読むときには頭が痛む。
祖父から貰った薬を飲んでも収まらない痛みは現在の杏寿郎は悩みの種となっていた。
「…なにか、なにかあの人と繋がりがある筈なんだ」
唯一会える日が彼の命日だなんておかしいじゃないか。
そもそもおかしい事だらけだった。何故俺だけが彼女を見つけて、会えることが出来るんだ。
杏寿郎は痛む頭を押さえながら"煉獄杏寿郎"という名前を見詰める。
「貴方は、貴方はなんなんだ」
書物には簡潔にしか彼の生涯は描かれていないが──────それでも伝わる"煉獄杏寿郎"という人物像。
(もっと…知らなくては)
きっと、彼と彼女のことを知っていけば"何か"に辿り着くはずだ。
その"何か"を俺は知らなくてはならない。
杏寿郎にとっては"使命"と呼んでもよかった。それ程までに胸が熱くなった。
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あろま(プロフ) - ネコ2世さん» コメントありがとうございます!コメント遅くなってすみませんでした…!今までで1番と言って頂けて嬉しいです!こちらこそ読んで下さり本当にありがとうございました! (2019年11月15日 18時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
ネコ2世 - 完結おめでとうございます!最後、主人公と煉獄さんで現世で再会出来て本当に良かったです!今まで様々な夢小説を読んできましたが、一番好きな作品です!書いてくださりありがとうございます! (2019年11月2日 20時) (レス) id: 6d89e33ad2 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - ukiさん» コメントありがとうございます…!丁寧で素敵なお褒めの言葉光栄です…!そう言って頂けて本当に嬉しいです!これからもよりよい作品が作れるように尽力していきます! (2019年10月25日 19時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
uki(プロフ) - 完結おめでとうございます。ただただ、最高の一言につきます。他作品も読ませて頂いておりますが、あろま様の文面が繊細で自然と涙が溢れておりました。自分自身が清くなれた気がします。これからも応援させて頂きます。ありがとうございました。 (2019年10月25日 1時) (レス) id: b46c65ea42 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 仍さん» コメントありがとうございます!読んで頂いた上に素敵なコメント嬉しいです…!私もこのコメントに幸せな気持ちになってます…!これからも頑張ります! (2019年10月20日 22時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あろま | 作成日時:2019年9月3日 16時