雨と探求心 ページ9
杏寿郎は13歳のあの雨の日に心に決めたのだ。
まだ名前も知らない女の事を知ろう、と。
まずは鬼について知ろうと思った杏寿郎は、煉獄家にあった鬼に関する資料や図書館で借りた鬼についての本を読み漁った。
その中でも最も衝撃的だった事実は
「……鬼は、太陽の光で死ぬ…」
杏寿郎は蛍光灯の光の下でそう呟いた。
どの書物にも共通して書いてあったのだ。鬼は陽の光を浴びれば骨も残らずに死ぬ、と。それゆえ鬼が日中姿を現すことはない、と。
「でも、しかし、あの人は…」
雨が降っていて空を雲が覆っているとはいえ、昼間は昼間。いつ晴れてもおかしくないのに。
それから鬼は身内でも殺して食べてしまうほどの凶暴性を持つことも知った。
「…あの人は鬼ではないのか…?」
全てこの書物に記されていた、鬼の使う魔術の"血鬼術"によるものなのか。
女の事を知ろうとしたのに、杏寿郎は益々訳が分からなくなってしまった。
鬼は書物に記される限り、この世で最も残虐で理性のない生き物だった。
あの儚げに佇み、ただひたすら一途に想い人を待つあの女とはいくら考えても結びつかない存在のようである。
「ぅうん…」
後ろで弟が寝返りを打つのを感じて杏寿郎は灯りを消した。
「もう今日は遅い、また明日から調べよう」
せっかく女の存在に一歩近づけた様だったのに、結局振り出しに戻ってしまった。
杏寿郎は心が霞みがかったように重いのを感じながら布団を被った。
学校と稽古の合間を縫っては今日はひたすら鬼の事を調べた。
祖母や祖父にも話を伺い、調べた内容をまとめて行った。
そうしてそれに関連して鬼殺隊の事も調べるようになった。
「煉獄家は本当に歴史が長いんだな…」
両親から昔から聞かされていた事だったが、煉獄家の歴史を書物で見て杏寿郎は感心した。
なるほど、だから家も古く、伝統深いしきたりが続いていて剣技にも精通しているのかと1人納得をする。
色褪せた書物を捲っていくと、最後に家系図が記されていた。
パッと目を通し、その書物を閉じようとした杏寿郎であったが
「これは…!」
杏寿郎は目を疑った。
大正初期、まだ鬼殺隊が活躍していた頃の家系図に──────"杏寿郎"という名前が記されていたのである。
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あろま(プロフ) - ネコ2世さん» コメントありがとうございます!コメント遅くなってすみませんでした…!今までで1番と言って頂けて嬉しいです!こちらこそ読んで下さり本当にありがとうございました! (2019年11月15日 18時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
ネコ2世 - 完結おめでとうございます!最後、主人公と煉獄さんで現世で再会出来て本当に良かったです!今まで様々な夢小説を読んできましたが、一番好きな作品です!書いてくださりありがとうございます! (2019年11月2日 20時) (レス) id: 6d89e33ad2 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - ukiさん» コメントありがとうございます…!丁寧で素敵なお褒めの言葉光栄です…!そう言って頂けて本当に嬉しいです!これからもよりよい作品が作れるように尽力していきます! (2019年10月25日 19時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
uki(プロフ) - 完結おめでとうございます。ただただ、最高の一言につきます。他作品も読ませて頂いておりますが、あろま様の文面が繊細で自然と涙が溢れておりました。自分自身が清くなれた気がします。これからも応援させて頂きます。ありがとうございました。 (2019年10月25日 1時) (レス) id: b46c65ea42 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 仍さん» コメントありがとうございます!読んで頂いた上に素敵なコメント嬉しいです…!私もこのコメントに幸せな気持ちになってます…!これからも頑張ります! (2019年10月20日 22時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あろま | 作成日時:2019年9月3日 16時