15年 (ページ6)

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失恋ページ6

誠也
『俺の幼馴染のAちゃん」

絵里
  「うわあ、話には聞いていたけどすっごく可愛い子だね！」  

誠也
「やろ？俺の大事な妹みたいなもんやで？」  

絵里
「こんなかわいい妹私も欲しい！Aちゃん？
私が誠也にAちゃんに会いたいって頼んだの！」       

妹。
     昔からそうとしか見られていないのではないかと思ってはいた。

 でも敢えてその不安は無視していたのだ。
 そんなことない、そんなわけないって。    

   こちらを見ていない大勢の大学生が
絵里さんの肩にぶつかりそうになる。 

それを見て誠也くんが絵里さんの肩を抱いて、
自分の方に引き寄せた。

 誠也
     「絵里？こっちきーや？」          

ノックダウンだ。   

気持ちのノックダウンもだし、涙腺もノックダウンだ。

誠也くんは私のことを呼び捨てで呼んだことがない。
ずっと「Aちゃん」と呼んでいるのに対して
絵里さんのことは「絵里」と親しい呼び名で呼んでいる。

誠也くんが私に言った「Aちゃんに会いたい」と言うのは
絵里さんが私に会いたいと言ったからだったのか。

      『あ、次の講義始まっちゃう』   

誠也
「え？まだ次の講義まで時間あんで？」

   『次の講義初めてだから早めに行こうと思って。
 じゃあね誠也くん！あ、あと絵里さん！
短い時間だったけどお会いできてとても嬉しかったです。
また、お話してくださいね〜』  

絵里
「うん！是非是非！誠也からLINEのID聞いてもいい？」

  『本当ですか！？ありがとうございます！じゃあ！』

       これはせめてもの見栄だった。

 せっかくこんな気合入れてお洒落してメイクも研究したのに
ここで泣いて負け組になりたくなかった。 

　

一時的だけどそんな見栄とプライドで
「良い幼馴染の子」という仮面を付けて
愛嬌たっぷりの笑顔を振りまく。  

絵里さんは嬉しそうに手を振り、
誠也くんは少し怪訝な顔をして私を見送った。

 早歩きで最寄りのトイレを目指す。
     トイレを見つけ個室に入った瞬間に涙が溢れ出した。

 目が赤くなってしまうと行けないから、
下を向いて涙が皮膚に触れないようにぼたぼたと涙をこぼす。 

嗚咽は音姫を使ってなんとかごまかした。
          私の15年の片想いはたかが5分で儚く散った