15年 (ページ43)

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大切な人は？ページ43

『健がちょっと遅れるから先に店入っとって、だって』 

 晶哉
「正門も遅れるらしい。先入って何か食っとろか」 

 『賛成』 

いつもの居酒屋さんは今日はサークルの新歓でとても混みあっていた。 2人で来店した私達は自動的にカウンターで食事を取ることになった。 晶哉はずっと枝豆に夢中だ。

  私は宴会場から見える一気コールをしている大学生達を眺めながらウーロン茶を飲む。 

『晶哉ってさ』

 晶哉
 「ん？」

  『お酒飲んだりしないよね』

 晶哉 
「お酒って、俺らまだ未成年やん。何当たり前なのこと言っとるん」 

 『偉いよね』

 晶哉
 「なんやそれ。当たり前のこと守るんは偉くも何も無いやろ」 

 『そういうところだよ、』   

当たり前なことをちゃんと自分の中で持ち続けていて、駄目なことは駄目だと判断できる。その場の空気とかそういうのに流されないところ。 そういう芯のあるところが、偉いしすごいよ。

   そんな晶哉に私はずっと助けられてきた。    
私はウーロン茶のジョッキを触りながら言う。     

晶哉 
「なんやそれ。意味わからん」   

そうは言っているが、さっきから空になった枝豆をずっと触っている辺り、まんざらでもないのだろう。 ほんと晶哉って知っていく度に可愛くなるな。   

優子 
「A！」   

『うわびっくりした！……って優子？どうしてここに？』 

 優子 
「私、今新歓やってるサークルのマネやってんの！良かった！Aのこと探してたの。」

      そう言う優子は私と晶哉の間に入ってぼそぼそと小さな声で話し出した。   

………え？        

『誠也くんが……絵里さんと別れてた？』    

 優子はそのまま誰にも聞こえないように全てを語った。   

優子 「いや何かさ、絵里さん、誠也先輩に去年の12月25日にマフラー渡したって誠也先輩から聞いたって言ったじゃん？実はその時に別れてたらしくてさ……誠也先輩は ” 大切な子がいるから ” って別れたらしいよ」  

ちょっと待って。どういうこと。 じゃあ私が誠也くんにマフラーを渡した時には既に絵里さんと別れていたってこと？

  絵里さんが最も大切な存在じゃなかったってこと？

………そういえば誠也くん、私に何か伝えようとしていた気がする。 でもその時、私が遮って逃げた。   

誠也くんにとって、大切な人って……？