15年 (ページ1)

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3歳の記憶ページ1

誠也
『Aちゃん？こっちきーや？」      

手を差し伸べてこちらに微笑みかける
彼の隣にまた立ちたかった。 

また、って言ってももう
とうの昔のことなんだけど。

    私が誠也くんの隣に立てていたのは
幼稚園から小学校までの頃。

     3歳の記憶なんて、あの記憶しか残っていない。 

そりゃそうだ。

だってもう10年以上前のことなんだもん。      

3歳の頃に父親の貯めた給料で立てたマイホーム。 
そこへ引っ越すタイミングに合わせて
私は幼稚園に初めて入園した。   

一人っ子の私は
今までに大人数の子達と関わったことが無かったから
とても怖くて… 

「あそぼう！」「ねえねえ！」と
強引に手を引っ張ってくる子達に
完全にビビってしまった。

  怖いのに縋り付きたい母親はここにはいない。 

大声で泣いたら泣いたで再び人が沢山来ちゃうんじゃないか、と幼いながらに感じた私は
教室の端でずっと体育座りをして過ごしていた。       

そんな時だった。      

誠也 
「なにしとるん？」

     ちょっとだけ顔を上げて見てみると
自分よりも幾分か背の高い男の子が
心配そうにしてこちらを覗き込んでいた。    

誠也 
「ねむたいん？」 

  『………』  

  私は無言で首を振る。 

すると垂れ下がっていたものが眉から目尻へ変わる。

    誠也 
「そっかあ、よかったわ」  

  そしてその子は私の隣にすとん、と座った。     

あれ、遊ぼうって手引っ張ってこない。    

隣に座る男の子はにこにこしながら
窓から見える外で遊んでいる子達の様子を見ている。

 遊びたいならあっち行けばいいのに。     

『あっち行っていいよ』

  誠也 
「え？なんで？」  

 『あそびたいんでしょ』

     完全に心を許していないからかきつい言葉が出る。
 すると彼はきょとんとして首を傾げる。  

 誠也 
「だってぼく、今きみとあそんでるよ」 

  『え？』