あたしにケーキは必要ない. ② (ページ6)

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# 青春と後悔_てつやページ6

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「Aはさぁ、授業寝たことある？」

『ありまくりやわ、高校の数学とか寝すぎて欠点しか取ってない』

「まじかぁ、それは意外すぎる」

のんびりと、ゆったりと時間が過ぎる平和な空間。
てつやとの撮影はここ、少し低くなった陽が差し込む1番上の階の教室だ。

『てつやは絶対寝てない授業なかったやろ？(笑)』

「失礼な、俺にだって起きてる時間あったわ！…多分！(笑)」

『ほらやっぱり多分やんか！(笑)』

本当に、いつも通りの会話を続ける。スタッフさんの指示も特になく__というかスタッフさんの指示が"お二人の好きにしてください"とのことだったので、特に何もせずにだらだらと隣同士の席に座って、ちょこちょこ体勢を変えて写真を撮ってもらっている。

「あー、俺もAとおんなじ学校だったらなぁ。もうちょっとやる気出して授業も聞いたのに」

『私が授業やるわけでもないのに？』

「ちげーよ、なんか自分の大事な人が同じ空間に居るってだけで頑張れるじゃん。」

急に立ち上がって伸びをしたてつやが、そのまま窓際の私の席の机に座る。つまり今私は窓際の席に座っていて、てつやが机に半分座って私を見下ろしている状態だ。…上から降り注がれる微笑みに、ほんの少しだけ、ドキドキした。

「…ま、安心して寝るパターンもあるんだけど(笑)」

『…絶対そっちやん。私起こさへんからね(笑)』

「ひっでぇ！そこは可愛く起こしてくれよ！"てっちゃん、起きてぇ♡"って！(笑)」

『え～～気持ち悪～～！(笑)』

絶対無理！と笑いながらてつやの足を軽く叩くと、笑いながらも流れるようにそんな私の手を掬い上げて、ゆっくりと指を絡め取る。

「…俺さ、本当に思うんだよ。…Aと高校の時に出会ってたら、今どうなってたかなぁって」

ふわ、ふわ。

てつやの髪が、クリーム色のカーテンが、まるで水の中で揺らめくように、ゆっくりと揺れ動く。

「……もっと早く出会って、Aのもっと近くに居たかった」

撮影の雰囲気や、普段の性格に似合わずぐっと唇を噛んだてつやは、俯いて私の手をぎゅっと握り直した。

…てつやの本音が、零れ落ちる。

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