12.太陽と月 ページ12
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たとえば。
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雅紀「ったくさ〜、二宮さんも人使い荒いよね〜。Aみたいな女の子に『資料室からこれ全部もってこい！』なんてさ」
「うーん…まあ、まあ…。それより雅紀くん、ありがとうね。一緒に資料探してくれて」
雅紀「全然いいよ、こんなの！」
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駅のホームで泣いている女の人に何があったんだろう。
すれ違った人はどんな思いで今日を歩いているんだろう。
怒りを蹴飛ばしていたあの男の人はどんなことで怒っていたんだろう。
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見知らぬ人と街中ですれ違うけれど、その人にはその人の想いがあって人生がある。
私の一言でもしかしたら、その人を救うかもしれないし、酷く傷つけてしまうかもしれない。
でもその行く末を知っているのは誰でもなくて、それを知る方法もない。
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人生っていうもんは、不思議で、分からない。
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ーーーー…いつも通り出社して、相変わらず鬼レッスンを受けて泣きそうになっていると
二宮さんがメガネを外しながら渡してきた紙には、大量の資料の名前たち。
「これ。資料室から持って来い」という命令を受けた私はすっかり慣れた5センチヒールで廊下を駆け抜けた。
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人が全然いない資料室の明かりをつけて、必死に探していると同期の雅紀くんが「Aちゃーん？」って話しかけてきてくれて
各々を説明すると、今望月さん外回り行ってるから手伝うよ！って言ってくれた。なんて優しいの。
どっかの誰かさんとは月とスッポン。あの人が月なら雅紀くんは太陽だ。
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雅紀「大体さぁ、二宮さん、Aちゃんにだけあたりきつくない？」
「…だよね！？そう思うよね！？」
雅紀「めちゃくちゃ思ってた。他の部署の人とか、俺たちには普通に優しいのにAちゃんには優しくないなーって」
「そうなの、そうなの。この前だって隣の部署の佐野さん？」
雅紀「あぁ、あのめっちゃ可愛い人！」
「そう！その人に話しかけられてニッコニコしてさ、私が来た瞬間真顔モード。さすがに傷つくよ」
雅紀「二宮さん、Aちゃんのこと嫌いなのかなぁ。こんなに可愛くていい子なのに」
「あ、ありがとう…(笑)。雅紀くんはいいなぁ、教育担当が望月さんで」
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えーそんなことないよー。
雅紀くんがそう笑った時だった。
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