9 ページ10
森蘭丸 side
突然、本能寺に本来殿の家臣であるはずの明智光秀の軍が攻めてきた。
不動を殿のところへ向かわせ、自身の愛刀であるAにこちらへ来いと声をかけたときだった。
刹那、Aは何者かに腕を引かれ、力任せに障子へと叩きつけられた。
そのままAの身体は地面へと落ちていく。
蘭丸「A!!!」
私はAの名を呼ぶが、向かってくる敵の刃を受け止めては斬って、を繰り返しているので近くに行ってやれない。
Aは、敵の武士だろうか、何者かに腕を引っ張られ無理矢理立たされ、俵のように担ぎ上げられた。
反抗したAは武士に強く殴られたようで、動きが大人しくなった。
今の一瞬で両脚がだらんと力が入らなくなったようなので、もしかしたら両脚を折られたのかもしれない。
蘭丸「A、ッA!!」
あぁ、痛いだろうに、辛いだろうに。すまない、A。
私がもっとお前の近くにいたら、とっさにお前を守れていたら、脚を折られるなどされなかったのだろうか。
信長「蘭丸、どうした」
あの子の名を叫ぶ私に殿が駆け寄って来て、何事かと尋ねる。
蘭丸「殿、Aが…何者かによって、寺の外へ……」
不動「!?」
殿の後ろにいた不動は目を丸くして驚いている。
信長「そうか……不動、お前はどうする」
殿は動じず、不動に尋ねる。
不動「俺…?」
信長「そうだ。恋仲なのだろう、Aと」
つまり、追いかけなくていいのか、ということだろう。
殿が仰ると、不動はしばらくうつむいた。
不動「……主人を守るのは、刀の本分…俺は貴方と……最期まで、戦います」
蘭丸「殿、私もです……どうか、魂魄なりとも…貴方のお傍に」
焼け落ちる寺の中で、一心に願った。
どうかあの子が、また大事にされますように。
あの子が、幸せでありますように。
4人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ