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連れてこられたのは殿の築いたお城、安土城だった。
知らない武士に籠から放り出されて、半ば引きずられる形でお城の中へと入る。
すると、ぱたぱたと誰かが走ってくる音が聞こえた。
薬研「おい、なんの騒ぎだよ……」
出てきたのは、薬研藤四郎だった。
薬研はおれを見ると目をまんまるにしてひどく驚いた様子を見せた。
薬研「A…!?どうしたんだよお前、信長さんたちと一緒にいたんじゃねぇのか?」
薬研とはゆきちゃんと知り合ってから殿を通して仲良くなった。
ゆきちゃんも交えて三振りで遊ぶこともよくあり、仲良くなってそこそこの月日が経っている。
そんな彼はぼろぼろであろうおれを見て心配そうに眉を下げている。
武士「織田信長はもういない。本能寺にて光秀様に討たれた。」
薬「…!!」
『……っ』
殿が討たれたということは、殿をお守りしていた蘭丸さまも討たれたということ。
そして、ゆきちゃんもきっと__…
その事実に、じわりと目の端に涙が滲む。
武士「じきにこの城は接収となる。光秀様の坂本城まで、お前たちは運ばれる」
それだけ言い残して武士はどこかへ去って行った。
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