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目を開けたら、そこは知らない場所だった。
作りと雰囲気からして、和室だろうか。
薬研「…A、」
ふと、懐かしい声に名前を呼ばれた。
『……や、げ』
ん、まで言い終わる前に力強く抱きしめられた。
薬研「A…A…!会いたかった…っ」
薬研はおれを抱きしめて涙を流している。おれもつられて視界が滲む。
『おれも、嬉しい…薬研、また会えたね』
そうして抱きしめ合っていると、薬研の後ろから誰かが歩いてきた。
審神者「薬研、その子が…」
薬研「あぁ、大将。そうだ」
薬研が大将と呼ぶその人は、気配からして人間だろうか。
薬研「A、よく聞いてくれ。お前は今日からここで暮らす。そして、この人に仕える…急すぎて理解できないかもしれんが、すまん」
審神者「…科代、だよな。突然ごめん。薬研から大体聞いてるから、無理しなくていいぞ」
薬研の話(ざっくり)によると、おれたち刀は歴史を守るために人の身を得て、審神者なるものに仕え、戦うとのことだった。
…蘭丸さまはもういない。あの人以外に仕えるというのは、違和感はあるが嫌ではない。
おれのことを案じてくれるくらいの人なのだから、きっといい人なのだろう。
蘭丸「…どうか、あの子が大事にされますように。あの子が幸せになりますように」
蘭丸さまの声が聞こえた気がした。
…蘭丸さまに尽くせなかった分、この人に尽くしてみよう。
『…ううん、大丈夫…です。あなたは、おれを使ってくれますか?』
審神者「うん、もちろん。お前さえ良ければ」
『…約束、ですよ。たくさん使ってください、主君』
薬研「A…いいのか」
『うん。蘭丸さまには会えたから。今の主君のために尽くすよ』
おれは改めて主君に向き直る。
『科代A、森蘭丸さまの愛刀…今は、あなたの刀ですね。改めて…よろしくお願いします、主君』
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