TOY BOX！

・ ページ34

　
　
　
　
「うんって言ったらどうするの？」

「か、考えようと思う」

「ちなみに冗談ね」



高校の時の白に近い金髪とは正反対の、真っ黒な髪の毛から覗く耳は真っ赤に染まっていた。顔が見えないのがなんだかもどかしい。


嗚呼、そうだった。そつなくこなしているように見せてとんでもない努力をしている人だった。これまではその対象がゲームに対してばっかりで、むしろそれしか見たことがなかったけれど、その努力の矛先が今私に向いている。
　


「Aさんっ」



意を決したかのようにばっ、と、顔があげられる。日頃引きこもっているおかげか、日に焼けていない白い肌が首筋まで真っ赤に染まっていて柄にもなく愛おしいと思ってしまった。


びっくりするくらい素直な、捻くれのかけらもない恋に真っ直ぐで必死な顔。



「好き、です。どこがとかやなくて全部、全部どうしようもないくらい好き。俺の気持ち受け取ってほしい。俺のこと選んでほしい」

「…」

「なぁ、あかん？」

「…」



ゲームばっかりしているくせに案外たくましい腕が言葉を紡がない私を閉じ込める。じわりじわりとだるまくんの火照った身体の体温が伝わってくる。
　

私もこんな風に真っ直ぐに人を愛せたら良かったのに、なんて。私、あなたの思うような真っ直ぐで純粋な女の子じゃないんだよ。寂しさの埋め方を知る嫌な大人なんだよ、そう言いたくなる。


純粋に向けられるその愛になんだか酷く後ろめたくなった。チクタクと時計の音が静かな部屋に響く。沈黙を破ったのはだるまくんだった。
　
　
　
　
　

・→←・

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す