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「ね、ちょっと!痛い痛い!引っ張んのやめてよ!ローレンってば!」
「…」
「っねぇ!!おい!!離せこのバカ!ヤニカス野郎!」
「…」
「わっ、」
ずんずんと引きずるように歩いていたローレンが突然止まり、思い切りその背中にぶつかる。振り返るローレンの表情はよく見えない。伸びてきたその大きな手は私の両頬を乱暴に掴んだ。
「そのうるせぇ口閉じねーなら塞ぐぞボケ」
「っ、」
ただでさえ低いその声がさらに低くなったことに加え、街灯に照らされた赤髪から覗くその突き刺すような瞳につい怯んでしまった。
私が黙ったことをいいことにローレンはまた腕を掴んで歩き始めた。結局そのまま無言で歩き続け、家へと帰ってきた。
帰ってからも雰囲気は控えめに言わなくても最悪だった。苛立ちを隠そうともせずかちかち、と無意味にライターの火をつけるローレン。
帰ってきてからどれくらいの時間が経ったのかは分からない。ただ、私の酔いはもうすっかり冷めていた。
「ローレン、」
「なに」
やっとの思いで絞り出した声は自分でもびっくりするくらい弱々しかった。
「……その、ごめん…わたし、」
ローレンっていつもどうやって謝ってくれていたっけ。彼はじ、とこちらを見て言葉を持っていてくれている。けれど言葉がうまく続かない。しばらくしてかた、と机にライターが置かれる音がした。
「……Aさ、俺が怒った理由ってわかってる?」
「…そりゃあまぁ」
続かない私の言葉を見かねてかローレンが言葉を繋いだ。
「……ならいいよ、俺も意地になってたとこあるし」
「…」
「怪我すんなとか、無茶すんなとか仕事上言えねーし、庇うなとも、…もし俺が逆の立場だったら絶対Aと同じことするだろうから言えねーけどさ」
「…」
「好きな人にはできるだけ傷ついてほしくねーし、自分のこと大事にしてほしいとは思ってるよ」
「……うん、ごめんなさい」
今度はするり、驚くほど簡単に謝罪の言葉を口にすることができた。そしてその言葉にローレンは優しく微笑む。
「A、」
いつの間にか縮められていた距離、彼の指が私の顔をなぞって唇に触れる。あ、キスされる。そんなことを思っていれば案の定唇が重なった。そして痛いくらいに強く抱きしめられる。
いい?なんて、耳元で掠れた声で言われれば断れるわけがなかった。
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たす(プロフ) - ?さん» 表現の仕方が素敵だなんてとっっっても嬉しいです〜😭ありがとうございます🫶🫶のろのろ更新ではありますが頑張ります〜! (5月1日 18時) (レス) id: 9e8649dc81 (このIDを非表示/違反報告)
?(プロフ) - たす様の書く文章の表現の仕方がとても素敵で、毎回楽しく読ませていただいています🫶🏻🫶🏻これからもお体に気を付けて更新頑張ってください〜! (4月30日 19時) (レス) id: f6c1f6723a (このIDを非表示/違反報告)
たす(プロフ) - さんかくさん» 年下だからこその真っ直ぐで押せ押せな感じを書きたくて作った話なのでそう言って頂けて嬉しいです〜!何度も読み返していただけてるのもほんと嬉しい限りです😭😭こちらこそいつもありがとうございます…! (3月24日 23時) (レス) id: 9e8649dc81 (このIDを非表示/違反報告)
さんかく - いけいけごーごーのdrmさんとても新鮮で鼻血でそうです(年下好き)、幾度となく読み返してるこの短編にまた新しいお話が増えて純粋に嬉しいです!今回のお話も何回も読んで噛み砕いてにやにやしたいと思います、いつもありがとうございます☺️ (3月24日 19時) (レス) @page35 id: 035bc710b7 (このIDを非表示/違反報告)
たす(プロフ) - さんかくさん» そんな風に言って頂けるなんて遅刻だろうとお誕生日話更新してよかったです…!こちらこそいつもコメントに救われてます!!今回はちょっぴり幼さの残る夢主ちゃんにしてみました😊嬉しいです、ありがとうございます! (11月8日 23時) (レス) @page27 id: 9e8649dc81 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たす | 作成日時:2023年6月18日 21時