tokyo2pm36floor：3rd

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洋平くん達のバンドはまだ駆け出しの新人のような存在で、
そのバンドの為に少しでもかっこ良く映るようにと
撮影してくれているスタッフの人たちがいる。




そんな風に一生懸命仕事をしてる人たちを目の前に、
私が発したかった「会いたい」という言葉は
ひどく自己中心的で我が儘な気がした。




それにこういう業界はドラマや映画の撮影があると
「親の死に目にも会えなかった」なんて
ワイドショーで流れるのを見たことがあるし


だから、ただ会いたいというだけで
そんなこと言えないなって思って、
また次があるって言い聞かせるようにして飲み込んだ。




それにそんなことを言ったら
洋平くんを困らせるだけっていうことも分かってる。


自分たちのために働いてくれている人がいるのに、
その状況で早く終わりたいなんて、
しかもその理由が彼女と会うためだなんて言えるわけがない。


それに洋平くん自身も
そんなことのために我を通すような性格じゃないって
知ってるし。




『帰ってて』 と言われた以上、
無理に待つわけにもいかなくて


帰ってこない洋平くんの代わりに
お洒落な外観を惜しげもなく晒している
デザイナーズマンションを恨めしく見上げた。




大体、洋平くんが一人暮らしを始めたこのマンション、場所がすごく微妙なんだよね。


私の家から少し遠くて、
電車を使わないと厳しいかなって思える距離だし。




もしこれからも会うことを考えると
終電とか気にする必要がありそうだから、
そうなると芸能界っていう特殊な場所で働いている洋平くんが帰ってくる時間まで待つことは出来ないかもしれない。




まあその前に合鍵とか貰えてないし。
それは会えてないからなのかも知れないけど・・・


まあ、洋平くんが居る時間帯を狙うなら
タクシーを使ってもいいんだけど、
でも、毎回タクシーってなると
金銭的にも厳しくなりそうだしなあ・・・。




て言うか、引っ越すんだったら
もうちょっとお互いが会いやすい場所にしてくれても
良かったんじゃないの？




ふと頭を過ぎったそんな考えにハッとした。




なんか私、、この前から少しずつ
イヤな女になってるような気がする・・・。




そんな自分に嫌悪を感じながら
帰り道をトボトボと歩いた。





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