10話なんて。 ページ13
Aside
「焦凍、いってらっしゃい。」
「...いってきます。」
食器洗いをしながら、焦凍くんが家を出たのを確認する。
その、いつもより不機嫌そうな声に思わず手が止まった。
...ここに置いてもらっている立場の私が、この関係の1番の被害者である彼に迷惑をかけている。
一緒にいるというだけで申し訳ないのに、なんて私は不甲斐ないのだろう。
せめて、空気のように人に認識されない個性でも持っていたら...なんて、何度思ったことか。
そんなくだらない事を考えていると、お姉さんが私に近づいてきて、
「あの、Aちゃん...後は私がやるから、そろそろ学校行った方がいいよ？」
と、声をかけてくれた。
「いえ...今日は食材切ることしかしてないですし...これくらいはさせてください。」
「それ、焦凍に何か言われたんでしょ？気にしなくていいんだよ。Aちゃんの料理、すっごく美味しいんだから！」
なんて、微笑みながら話しかけてくれるお姉さんはやっぱり優しい。
...そう感じると同時に、気を使わせてしまって申し訳ない。
「いえ...もっと練習して、上手く出来るようにならなきゃ....だって、私は置いてもらってる立場なんですから....」
また手が止まってしまった。
あぁ、私は何を言ってるんだろう。
こんなこと話されても、迷惑なだけじゃないか...
「....あのね、Aちゃん。」
いつもより低いお姉さんの声に、思わずビクッと体が跳ねた。
....いけない、怒らせてしまった。
そりゃそうだよね。
今までせっかく気を使ってきてくれたのに、まるでそれが嫌みたいな言い方をされたら...
だけど、どうやら私の考えていることは的外れだったようで
「.....私はAちゃんのこと、妹みたいに思ってるよ。
もちろん、お父さんや焦凍のことに関係なくね。
だってAちゃん、いい子だし、優しいし...
だからそうやって自分のことを責めるのはもうやめてほしい。
置いてもらってるなんて悲しいこと、もう言わないで。」
『ね？』と、笑いかけるお姉さん。
その優しい表情は不思議とお母さんと重なって見えて
「......ありがとう、ございます。」
気づいたら、顔がほころんでいた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3324人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
セレネ(プロフ) - 続編すごく楽しみです！更新大変だとは思いますが頑張ってください！応援してます！ (2018年8月17日 14時) (
レス) id: caaac3f99a (このIDを非表示/違反報告)
しぃ(プロフ) - 続きみたいです(吐血) 更新大変だと思いますが、応援しています。この恋の行く末楽しみです。 (2018年8月16日 22時) (レス) id: b9e3ade31c (このIDを非表示/違反報告)
鈴木美妃(プロフ) - 続編めちゃくちゃ楽しみにしてます。更新頑張って下さい。応援してます。 (2018年8月3日 22時) (レス) id: 5deb47caf1 (このIDを非表示/違反報告)
凛月(プロフ) - 私も映画見ました！！本編じゃ絶対見れないようなシーンもあったので嬉しかったです。特にかっちゃん。 (2018年8月3日 22時) (レス) id: eef577390e (このIDを非表示/違反報告)
白龍(プロフ) - 久々の更新とても嬉しかったです！続編おめでとうございます！！これからも頑張ってください！ (2018年8月3日 21時) (レス) id: e12a3831fb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Kuumi
| 作成日時：2018年1月2日 22時
