ブランクルーン - ﾌｪｲ･ﾙｰﾝ - (ページ8)

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産まれた頃から部屋に隔離されたAは

乏しく、筋肉が低下していた。

SSCとしての念動力を扱い、自身を浮かせて移動した方が早いと察してしまえば、使われなくなった足は体を支える程の筋力しかない。ㅤㅤㅤ

フェイが手を差し伸べ、されるがままに両足を使い立つA。
同じくらいの歳のはずなのに頭1つ分小さなAに酷く、困惑するしか無かった。

甲斐甲斐しく面倒をみるフェイは、直ぐに飛行して動き回るAを見付けては、こら〜！と声を上げた。

一緒にサッカーをやるために、自らの足で歩くことをフェイだけが口うるさくAへ訴えかけた。

SARUの傍らで転がるA。

ふよふよと浮くAを見上げたSARUは、初めてその事に気付いては近くに転がる丸いオレンジ色のクッションを浮かせては、

「ほら、使いなよ」

と、宙に浮いたAの元へと運んだ。

首を傾げるAへ、それにでも乗ってれば。と呆れた素振りのSARUは手元に移された情勢へ視線を落とした。

宙に漂うクッションを受け取っては、ぽふん、と大きなクッションへ顔を沈めれば、初めての感覚に体を預けた。

揺れていた髪と服が重力に従う。

ふわりと浮いたクッションとAが、ふわりふわりと空に浮かぶ雲のように漂い続けた。

今だって忘れない。

名前を呼んでくれるフェイの声。

その声を抱きしめて、反復するように名前を呼び続ける。

“私はここにいるよ”

まだ、己の意識があるうちは世界から消えてはいない。

切り離された孤独な時間を持て余すだけだ。

まだ、誰かの心に、記憶に、自身が生きていることに震える。

“お願い皇帝、もう一度だけ…”

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