ブランクルーン - ﾌｪｲ･ﾙｰﾝ - (ページ44)

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❑ 雪が降るページ44

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イナズマTMキャラバンは、雷門中学のグラウンドへとついた。
泣き腫らした赤い目元に鼻をすする天馬と信助。

「天馬！」
「シン様…っ」

葵と茜が駆け寄ってくる。その後に続くように、霧野や狩屋、影山。
雷門サッカー部が心配そうにキャラバンへと集まる。

「……ごめん、皆」

全てを覚えているわけじゃない。
けれど、確かに。目的は達成できなかったことだけが、わかる。

瞳を伏せ、掠れた声でフェイは何も無い掌を見詰める。

忘れないようにと、誓ったはずの名前。
消えないように、何度もその手を掴もうと伸ばしたはずなのに。

確かに、触れていたはずなのに。

“ㅤㅤ”

耳に触れる。

広げた掌にひやりとした感覚。

「雪……？」

瀬名が空へと手を伸ばす。道理で寒い訳だ……と、肌を摩る。
ほう…と息を吐けば白く空へと溶けていく。

掌に溶ける雪を見詰めていれば、追い風が吹き、髪を強く濡らしていく。
瀬名の長いスカートが大きな音を立てはためく。

「なんだぁ？！」

驚いたような声に、くしゃみをする音。

『忘れちゃだめやんね！絶対、忘れちゃ…だめやんね』

舞い散る雪と共に、母の……共に旅をした菜花黄名子の声が。
それは、優しい母の声。

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何か大切なことを忘れているような気がしてならない。
幼い我が子のフェイの笑顔を見る度に、不安が胸を掠めていく。

言葉を話し、SSCの力を暴発させることもないフェイ。

6歳になる頃、フェイはニュースに釘付けになっていた。
未だSSCを受け入れられない世間は、度々その力を恐れ大々的にニュースになっていた。

「フェイ？お昼ご飯やんね〜……フェイ？」

ニュースを見て、フェイは泣いていた。
難しいニュースを、幼いフェイが理解できるはずないのに。

不思議そうに、黄名子はフェイを抱き、そのニュースを見詰めた。

『12月xx日未明。SSCによる事故が起きました。SSC遺伝子の力が暴走し家が爆発するという─────』

その映像に映し出された名前。

「A・ウィルド…」

読み上げた黄名子を、フェイは見上げた。その瞳は、何も言わずにただ、涙を浮かべていた。

「なんで、ウチ…こんな大事なこと忘れてたやんね」

フェイを抱きしめ、その肩に涙を落とした。

「かあさん、なかないで」

ごめん、ごめんねフェイ。そう、何度も謝り続けた。

白い髪のあの子が、記憶の向こうに揺れていた。

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