ブランクルーン - ﾌｪｲ･ﾙｰﾝ - (ページ42)

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↻ 皇帝とSARU ページ42

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世界から切り離された感覚。

声はもう届かない。

“仕方の無い事”

そう、自身に言い聞かせては小さく。小さく膝を抱えた。
いつからか、小くなった掌を見詰めて初めて皇帝と出会った日のことを思い出していた。

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それは、全ての始まりのインタラプト。

吐く息が白く溶ける。部屋の隅で膝を抱え、小さな体を丸め込み“寒さ”から体を守る。

頬に着いた涙のあとは、乾き、唇は青白く。
虚ろな瞳で開かれることは無い扉を見詰めていた。

今日もお母さんは来ないんだ──────。

静かに瞳を伏せた瞬間、人の悲鳴が聞こえた。
何かが割れるような破裂音の後、扉が大きな音を立て部屋の中へと吹き飛んできた。

目を開く気力もないA、

“だれ”

問いかけると、扉の向こうで笑い声が聞こえた。

「なぁんだ、生きてんじゃん。やっぱこの時間が正解だったね」

カーペットに靴の音が吸収される。
目の前に両足を揃えた靴。

突然、体が中に浮き、逆さまの白い髪の少年がそこにいた。
宙吊りにされたのは、A。

「僕は皇帝」
“こうてい…？”

頭に血が登り、苦しそうなAの向きを直し、宙へふわりと浮かべた皇帝は微笑む。

「君は明日死ぬ運命なんだ」
“しぬ……うんめい……？”

不思議そうな瞳は、真っ直ぐに皇帝を見ていた。

「この世から消えるってこと。僕が君を助けてあげるよ」
“いらない”

目を閉じたAは、死を受け入れていた。

生みの親から投げかけられた言葉を、知っていた。
両親の望みなら、本望だろう。

「ちっ」

舌打ちをした皇帝は、壁へとAを放り投げる。
ぬいぐるみの様に床に緩かに落ちたAに、皇帝は笑った。

「いらない？生きようと必死な癖に」

SSC遺伝子の力で、身を守っていたAは。
打ち付けられた衝撃も、傷も何も無い。

「君は生きたいんだ」
“……ない、”

違う。そう言い切るAに、苛立った皇帝はこういうの面倒なんだよと言葉を吐き捨てる。

「…命令だ。君の命は僕の為に使う」
“めいれい…？”
「そう、君は僕の為にだけ生きるんだ。そうして、その力も君も僕の物だ」

見下ろす皇帝に、Aは不思議そうに見上げた。

「君の力が必要なんだ」

その日確かに死ぬ運命だったAを救いあげたのは皇帝だった。

「君を連れていくことは出来ないから、君自身で探すんだ。この時代の僕を」

そうしてあの日、AはSARUの元へと姿を見せた。
皇帝の命令の元。
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