ブランクルーン - ﾌｪｲ･ﾙｰﾝ - (ページ41)

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❑ ずっと、ずっとページ41

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時空間を移動していたキャラバンの中に、突然風が舞い始めた。
フェイの髪を揺らす風に、神童の髪を撫で、剣城のもみあげが揺れていく。

「……風？」

不思議そうな天馬が呟けば、突然。
ポケットにしまっていたクロノストーンが輝いた。

「A！」

慌ててポケットから取り出し、光り輝くクロノストーンを囲む。
キャラバンが大きく揺れた。

風が波打つように吹き荒れる中、クロノストーンが放つ光がゆっくりと人の形を象る。

揺れた細い線は、長い髪の毛。細い腰も、手も足も。

淡い光に包まれ、ストロベリーピンクの瞳が開く。

「A…っ」

抱きしめようと手を伸ばしたけれど、掴めることはなく空気を掠めていく。
その事実に、フェイは目を見開き…絶望に顔を歪ませていく。

消えた座標は唯一無二、Aが存在していた未来。
フェーダ勝利のインタラプトの先。

「どうして！！」

天馬の声がキャラバンに痛く、響いた。

“…フェイ”
「A…っ、いやだ！…だめだ、消えないで」

溢れ出る涙を、拭う事も出来ない。
ただ、懇願することしか最早出来ることがない。

全てを察し、溢れる悲しみの涙を信助は蹲り、膝を抱えて堪える。
剣城も伏せ、唇を噛み締めては涙を堪えた。

静かに流れる涙を、拭うことを忘れ。神童はただ、粒子に変わるAを見詰めていた。

膝を折り、俯いて床に涙の泉を作るフェイ。
椅子の肩を握り締め、奥歯を噛み締めた天馬。

何故、2度も目の前で大切な人を失わないとならないのか。

「こんな未来……あっちゃいけないんだ！」
「フェイ…」
「君がいない世界に意味なんて無い！こんな世界！」

要らない。

そう、言葉を吐き捨てようとしたフェイの唇にAの人差し指が確かに触れた。

「…そんな、こと……言わないで」
「でもっ……君と一緒に居られないなら……っ」

震える声で、Aは微笑んだ。

「……フェイが生きてる……SARUが笑ってる……フェーダの、みんなが……幸せな未来」
「君がいない世界なんて……誰も望んでない！」

フェイの言葉に、困った様に眉を下げる。

「大丈夫……」
「何が、」

静かに首を横に振り、大丈夫なんだよ。と微笑むAは、淡く光る粒子と共に。

ゆっくりと、その輪郭が溶けていく。

「A！行かないで……！」

天馬が手を伸ばす。
その手は、粒子を振り払い、虚空を掴んだ。

「ずっと、ずっと……大好きだよ、フェイ」