ブランクルーン - ﾌｪｲ･ﾙｰﾝ - (ページ40)

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❑ 風ページ40

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無機質でテーブルと椅子が並べられた、生活感の無い部屋。
足を組み、テーブルへ頬杖をついたSARUと、楽しげに談笑していたメイアやギリス…フェーダの面々。

不意に、メイアのスカートがふわりと舞う。

異様な気配に、ギリスがメイアの肩を抱き寄せ見えざる何かを警戒する。

目配せをし、臨戦態勢へとSARU達も構えた。

ふわりと、メイアの髪が揺れる。

息を飲んだその瞬間、換気口があるだけのその部屋に突風が吹いた。
突然の事に目を閉じ、ゆっくりと見開いた。

「……今のは一体」

言い表しようのない嫌悪感が、全身の毛を逆撫でしていく感覚。
身を寄せ合い、困惑に眉を潜める中。

「SARU…？泣いているの？」
「……え？」

SARUの頬に伝った涙。

「メイア？」
「ギリスまで……皆も、どうして？」

泣いていた。

頬を拭い、零れ落ちる涙は止まることを知らず。
あのSARUが膝を折って涙を流し続ける。

異様な光景に、メイアはギリスの胸元へと顔を埋めた。
優しく抱きしめるその手の温もりに、安堵と胸に空いた切ない感情に目を塞いだ。

「ふざけるな！！何をやってるんだフェイ・ルーン！！」

突然怒鳴り声を上げたSARUは、暗転する記憶の先に白い髪を揺らす少女を見付けた。

「消させない……！」

刻め。

この脳に、記憶に。

自身のこめかみに手を触れ、忘れないように消させないように、その名前を顔を声を。刻み込め。

“SARU”

ふわりと舞うように振る優しい声に、見上げた。
そこには誰もいないのに、まるで雲のように漂うAが居るように感じる。

“私を見つけてくれてありがとう、SARU”

「…君が、勝手に僕の目の前に現れたんじゃないか」

手を伸ばしても、そこには誰も居ない。
君は今、どこに存在しているのだろう。

“…SARUと出会えて、フェイと出会えて、フェーダ皆と出会えたこと……絶対に忘れないよ”

姿は見てなくても、泣いているのがわかる。
きっと、今Aは泣いているんだ、消えてしまうことを察して。

“ありがとう、SARU”

「ふざけな！勝手に消えるだなんて許さない！命令だ……ｯ」

床を叩き付け、亀裂が走る。
白い手袋に赤い染みが滲んだ。

「消えるな…ｯ」

掠れ、上擦った声にニケが駆け寄り、その手に触れる。
心配そうな表情に、皆が駆け寄る。

“…さようなら”

風がゆっくりと頬を撫でていく。

「…私達、何で泣いているの？」
「SARU…」
「馬鹿野郎…っ」
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