ブランクルーン - ﾌｪｲ･ﾙｰﾝ - (ページ33)

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❑波が立つページ33

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「A？！」

咄嗟に、宙に浮いたクロノストーンへと手を伸ばしたフェイ。
淡い光に包まれ、Aの髪が揺れた。

「よかった…！A」

安堵した瞬間だった、震える睫毛からストロベリーピンクが揺れる。
しっかりと、その目にフェイを捉えているはずなのに。

Aは…フェイへと手を伸ばして名前を呼んだ。

“…皇帝、くるし…い、”

苦しみを訴えるAは、その輪郭が歪み。
光は小さくなっていく。

フェイの腕の中で、小さく…小さくなっていく姿に、フェイの瞳に涙が。

「だめ…！だめだよ、A！消えちゃだめだ……！」

気が付けば、初めて出会った頃よりも小さなAがそこに居た。
輪郭が淡く発光し、揺れ…強く抱き締めれば消えてしまいそうに儚い。

小さな腕で苦痛を訴える体を抱き締めて、痛みに顔を歪めていく。

「A？」
“たすけて、こうていさま”

紅葉のように小さな手をフェイへと伸ばし、ぽろぽろと溢れた涙が雪の結晶へと変わっていく。

助けてを繰り返すAに、困惑するフェイはその手に触れた。
その瞬間、触れた指先に火花が散るような衝撃が走る。

「く…っ？！」

全身に巡る血に、神経に走る衝撃にフェイは生理的な涙が滲む。

「フェイ？」

フェイの肩に、天馬が触れた。

「うわぁ！！」

思わず天馬はその手を離し、フェイを凝視した。

「天馬！フェイ！」
「触っちゃダメだ信助……！」

天馬に止められた信助は、立ち止まった。
苦痛に顔を歪めるフェイと天馬に気付いた、小さなAは小さく首を振る。

“ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい！”

“おこらないで、すてないで”

“いたいのはいや”

“いいこにする”

“いっしょがいい”

痛いくらいに脳に、耳に響くAの悲痛な叫びに剣城も、神童も耳を抑える。抑えたところで、脳に響く以上抗う術はない。

“たすけて、こうていさま”

体に走った衝撃と共にAの記憶が逆流した。
受け取ったフェイは、痛みに震えながらもAへと優しく手を差し伸ばす。

「大丈夫…捨てないよ、怒らないよ。痛い思いも…もう君はしなくていいんだ」

フェイの手に触れたAは安心したように微笑み、クロノストーンへと形を変えてしまった。

「フェイ…今のは」
「分からない…でも、見付けた」

この瞬間、平行世界に波が立った。
その余波が、突然襲いかかりAがその波に触れた。

そして見えた記憶。

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