ブランクルーン - ﾌｪｲ･ﾙｰﾝ - (ページ17)

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❑触れた手ページ17

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「……皇帝？ああ、SARUの事か」

懐かしいな。そう思ったフェイは、違うよ。と首を振っては感情がない瞳をしたAを見詰める。

あの頃の、今目の前にいたAはまだ、サッカーの楽しさを知らない少女だった。
そう、思っていたのに。何かボタンをかけ間違えているような錯覚に陥る。

“それなら、どうして未来のフェイがここに居るの？”

「そうだ……君に伝えないとならない事が」

目の前に存在するAに会えたことがたまらなく嬉しくて、忘れてしまう所だった。

どこから話せばいいんだろう。そんな風に、瞳を伏せては確かに存在するAへ手を伸ばした。

消えないようにそっと手を握れば、Aの真っ赤な瞳が揺れる。
ふわりと風が舞い、白絹ような髪がふわふわと畝ったように動く。

Aの力だ。

“フェイ？”

脳に響く声に、うんとね……と言葉にしようとしたフェイ。
堰き止めていた感情が溢れだしてしまい、大粒の涙が、気持ちとは裏腹に零れ出してしまう。

だって、生きているんだ。

あの日、消えてしまった大切な存在が、やっと、やっと辿り着いた君が。生きているんだ。

小さな手は、ひんやりと冷たくて。
真っ白な肌も、ほんの少しだけ色付いた唇も。
揺れる、肌に負けないくらい白い髪はオレンジの夕暮れに染まる。

「お願いだから、僕の前から消えないで──────」

目をまあるくしたAは、どうしたの？とフェイの頬へと手を伸ばした。その手をとり、フェイは震える声で、上擦った言葉で。

「君は、消えしてまうんだ。ラグナロクが終わったら……だから、だから僕は……！」

“私を探していたの？”

目をぱちくりとしたAは頷いたフェイに、悲しそうに目を細めた。

Aの瞳に映るフェイは、瞳を腫らし、頬が痩けてはゆったりとした服が更に大きく見える。
つい先程まで、傍らにいたフェイとあまりにも違う姿にAは、目を瞑ってしまいたくなった。

「何度も、何度も忘れないように君の名前を呼ぶよ、だから……必ず迎えに行くから君も諦めないで」

震える声に、こくりと頷いたAは優しくフェイの頬を撫でる。

“わかった”

その言葉に安心したように、フェイ名残惜しそうに手を離した。

「未来で待ってる」

こくりと頷いたAは、優しくフェイを送り出した。
柱の影に潜んでいたキャラバンへ乗り込むフェイを見届けては、キャラバンが時空間に飛ぶのを見詰め続けた。

「…フェイ」

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