ブランクルーン - ﾌｪｲ･ﾙｰﾝ - (ページ13)

今日:26 hit、昨日:3 hit、合計:7,776 hit

❑託された名前ページ13

ㅤ

だってそうだろう？
その言葉が示した答えは、簡単な物だった。

フェイが天馬と共にゴットエデンへ訪れた時。それは、あの子が雷門イレブンに出会うずっと前のこと。

「化身アームドを天馬は既に身に付けていた。そうだろう？」
「……あ、れ？」

それじゃあ、あの子と出会ったのはいつの日だ。
いつ、あの子は雷門イレブンの目の前に、敵として立ちはだかったのだろう。

それが思い出せない。

酷い頭痛がする。

そんなフェイに、シュウは差し出した右手でフェイに触れる。
そっと、手に触れられたフェイは目をぱちくりと見開いては、不思議そうにシュウを見つめた。

「僕の知っているあの子は…時間の流れが止まっていたんだ」
「…つまり？」

左手を見つめたシュウは、僕と同じかな。と笑う。
つまり、それは。

この世に想い留まる思念の塊。魂の欠片。

シュウとは相反する、白い髪を靡かせて赤い目をした少女。
あの日、この島で出会った少女はやっと見付けたと、微笑んだ。

遠い遠い時間を、1人で旅をしてはやっと辿り着いた200年前の今。

「どうして、シュウに会いに来たの…？」

フェイの問いかけに、シュウはうーんと、寂しそうに睫毛を伏せては何かを整理する。

おそらく、シュウの中にはあの子に関するのとがしっかりと記憶されている。しかし、伝える言葉を、物事を間違えてしまえば、

あの子の願いは叶わない。

「教えて、シュウ。僕はあの子に会いたいんだ、あの子を迎えに行かないといけないんだ」

名前も思い出せないあの子を。

真剣な眼差しのフェイに、シュウはふう、と息を整えてはふんわりと笑う。

「あの子が長い時間を1人で遡ってまで僕に逢いに来た理由、それは」

「それは……？」

「覚えていて欲しかったから」

「え？」

瞬きをしたフェイに、シュウは眉を下げてフェイの手を離した。

「今ならわかる。全ては繋がっていんだ…この瞬間の為に」

「シュウ？」

「フェイ・ルーン。今度は忘れちゃダメだよ、しっかりとその名前と、その声を体全身に刻むんだ。本気で会いたいと願うなら」

真剣なシュウの言葉に、表情に強く頷いたフェイ。
そのフェイを見ては、満足そうに頷いてシュウは微笑む。

「あの子の名前はA・ウィルド。君を、君の名前だけを呼び続けたたった1人の女の子だよ」

“フェイ…”

鼓膜を、心を震わせる声がした。

忘れてしまったはずの、愛おしいあの子の声。

ㅤ