ブランクルーン - ﾌｪｲ･ﾙｰﾝ - (ページ11)

今日:9 hit、昨日:3 hit、合計:7,759 hit

❑あの日の君にページ11

ㅤ
ㅤㅤㅤㅤ
「ワンダバ！僕をあの子の元へ連れて行って。時間はいつでもいいから…！あの子が存在する時間へ───────」

ワンダバの手を引いては、アルノ博士達の静止を振り切ったフェイはまだ、頬に伝う涙も乾かない内に笑う。

「僕は1人でもいくよ。あの子を迎えに」

それに。

扉に手をかけたフェイは、ワンダバの手をしっかりと握って振り向いた。

「SARUも頑張ってくれてる、そんな気がするんだ」

慌ただしく走り去っていくフェイの後ろ姿を、開いてしまった口をそのままに天馬が、円堂監督を見た。
円堂監督も不思議そうに天馬を見詰め返しては、豪炎寺、鬼道へ視線を向ける。

2人は視線を交わしては、円堂へ視線を返し「俺に振るな」と、言いたそうな瞳をした。

「フェイは今、何をしに行ったんだろう」

天馬の言葉に、涙を拭いた狩屋が答えた。

「直ぐに戻ってくるでしょ」

ならいいんだけど…。
ただ、俺達は今何をしていたんだろう。

机上に散らばる分岐点が書き出された、無数の紙が教えてくれるのは一体なんなのか。

グルグルと赤い丸で囲まれたそこに書かれた文字は

初めての遭遇、と書かれていた。

「この日、俺達は……誰とあったんだろう」

キャラバンに乗り込んだワンダバとフェイは、初めて雷門イレブンにAが接触した日を。

「行くぞ、フェイ……！」
「うん！」

7色に輝く時空間の向こうに君に会いに行く。

今はただ、君に会うために。

.

「どうして、居ないんだ…？」

その日、確かに雷門にAが会いに来たはずなのに。
その時間、その時空には既にAの存在がなかった。

「収束がここまで来ているなんて…」

「そうだ、あの人に会いに行こう。ワンダバ！」

「あの人？」

時の流れに影響されず、膨大な時間を自我を持ち耐え抜いた、強靭な精神力を、サッカーの実力を持つあの人の元へ。

なるほど！とにやりと笑うワンダバは慣れた手つきで操作しては、再び時空間を超て行く。

青空へ抜ければ、キャラバンは慣れたようにある一角へ降り立った。

キャラバンから飛び出したフェイは辺りを見渡しては、その人の影も形も無いことに気づいたけれど、お構い無しに名前を呼ぶ。

「シュウ！シュウ！！」

時の流れに干渉されない、このゴットエデンという地で隔離されたシュウなら

きっと、なにか。

ㅤ