自由な君と。√24 ep.4 【ｲﾅgo】 (ページ9)

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ずっと。ページ9

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きょとりとした透也の柔らかな髪を優しく撫でた剣城は、Aを見詰めた。

「…サッカーのことは俺達に任せてください」

剣城の言葉にAは納得は出来ないと言うような瞳で見詰め返してしまう。
真っ直ぐな瞳を見ていれば、思い出すのはつかの間の幸せな学校生活。

振り返って見る過去は、Aにとっては穏やかとは呼べないもので。
そこに南雲晴矢という存在が居たから、歩いてこれた道だってある。

その存在に突き放された現実と、和解している未来の姿。
曖昧で感情の整理が追いつかないでいたAにとって、雷門で過ごした時間は“Aにとっての現実”から目を離すには十分な甘い時間だった。

「…ありがとう、剣城くん」

小さく頷いた剣城にAが目を細めた。
その瞳は剣城が知るAとは違うけれど、確かにそこに面影を感じてしまう。

剣城の脳裏に浮かぶのは、雷門という学び舎で、Aの見せた無邪気な姿。
授業の意味が分からないと教室を避けて歩き、塀を飛び越えて帰宅してしまう日も少なくはなく。

練習中だというのに、ミーティングルームで器用に眠る姿だったり。

どれもストイックにサッカーに向き合うAとは掛け違えたような存在で。

「…Aさん」
「…はえ？」

突然、いつもとは違う呼び方をされAが目をぱちくりとさせた。
剣城はそんなAへと目を細め、腕の中で剣城を見詰める透也の髪をさらりと撫でていく。

「…未来のあんたは大切な人に囲まれて、幸せだって笑ってた。だから、何も心配するな」

まるで、別れの挨拶のように。

「A姉！｣
「天馬くん…？！」

わ！とAを抱き締めた松風。
ふわりとした髪が頬に、耳に触れては優しく心を包む様に。

「大丈夫、なんとかなる。また必ず会えるから」
「なんで、そんな……最後みたいに、」

Aの瞳に涙が滲む。

「何となく…でも、大丈夫だよ」

知っている。Aと初めて出会った時、Aは松風のことなんて覚えていなかった。

それでも、こうしてまた出会えた。

24歳のAと、再び巡り会うことが出来た。

「“なんとかなる！”だから、俺達を信じて待ってて」
「……うん、わかった」

松風の笑顔にAは仕方ないな、と笑って。

大海原に大きな波を立てる船に乗り込み、大きく大きく手を振った。

「絶対！優勝！してね！」
「うん！必ず優勝して、サッカーを取り戻すよ」

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