自由な君と。√24 ep.3 【ｲﾅgo】 (ページ39)

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魔法の手。ページ39

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突然のAの言葉に豪炎寺は目を丸くし、えっと…と言葉を探す。

「こうしてお世話になってますし、何か……お手伝いできることがあれば」

決心したようなA。
けれどその目元にはうっすらと影がいて、折れそうに細い腕も。
見慣れた肌色とは違う、血色の悪さが伺える頬。

「Aの好きな事をしていればいい、沢山遊んで食べて眠って。出来れば、俺の手の届く所で安全に」
「それって…」

特に何もすることが無いようだ。
不服そうに頬を膨らませたAに、豪炎寺は笑い声が零れる。

「そうだな、強いて言うなら」
「？」

上目遣いで見上げるAへ目を細めた。

「雷門であった出来事を教えてくれ。面白いこと、楽しいこと、困ったこと…どんな些細なことでもいい。Aが感じたことを」

Aの瞳が真っ直ぐに豪炎寺へ向かう。くつくつと音を立てる鍋のスイッチを止め、豪炎寺は変わらない声色で告げる。

「大人に寄りかかることを学んで欲しいんだ」
「……おとなによりかかる？」

首を傾げたAに豪炎寺は頷く。
フィフスセクターやシード、レジスタンス。そんな名称で役割を受け入れ革命の風が吹き荒れる。

本来、その嵐の渦中に13歳のAは存在するはずがない。

優しく頭を撫でる豪炎寺の手を受け入れるAは目を細め、豪炎寺を見詰めた。

「豪炎寺さんの手は魔法の手みたい」
「ん？」

うっとりとその掌に体を預けるように擦り寄るA。

「ひとつ、思い出したことがあるんです」
「思い出したこと？」

夕飯の支度を終え、テーブルにグラスを起きながらAは頷く。
豪炎寺も箸を用意しAへと顔を上げた。

グラスへお茶を注ぐAは、時を渡ったその日の事を豪炎寺に伝える。

「河川敷で円堂守に出会って、サッカーをして…あの人の背中を見ていたら声をかけられて……気付いたらゴッドエデンに居ました」

顔を上げ、豪炎寺を視界に写したAは躊躇ったように口篭り、そして…

「私は……あ、いや……大人の私は、あのままだと死んでいた……って、言われて」
「誰に」

緊張の走った豪炎寺の声に、Aは肩を震わせた。
萎縮させてしまったことに気付き、豪炎寺は目線を合わせるように膝を折り、Aの瞳を見詰める。

「それは、思い出せなくて……でも、あの人は……確か」

居場所のない自分に動機なんて必要ないと、話を聞かなかったことを後悔している。

ちゃんと話をするべきだったのに。

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