自由な君と。√24【ｲﾅｲﾚ】 (ページ44)

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蝉時雨。ページ44

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「あー…溶けそう」

蝉時雨。

白い窓にアイボリーのカーテンが揺れる先に、広く晴れ渡る青空が広がる。
じっとりと額に伝う汗をタオルで拭いAは下敷きで扇いでは少しでも茹だるような暑さから逃げ道を作る。

ワイシャツは汗で湿り、ほんのりとネイビーの肌着が浮かぶ。
そんなAと机を共有し、参考書を読み進めていた豪炎寺が同じ様に空を見上げた。
いつもは閉じている襟元も、他の誰も居ないことも相まって大きく開く。

「今何度くらいあるかなー」
「さあな…」

言葉にすれば、尚更暑いだろうに。
Aの髪をゆっくりと揺らす生温い風が入り込む。

ふと、視線を落とし目の前の豪炎寺へと視線を移した。
窓を見上げてたままの横顔へと手を伸ばす、

汗が伝う首筋へと触れれば、驚いた様に瞬きをする豪炎寺。

「…何だ？」
「うーん？…なんか、改めて修也変わったなぁって」

目立つ様になった喉仏も、少しだけ低くなった声に。
骨張った指先や、逞しい腕。

それに比べて、自分は成長が見えないと溜息をついた。

「そう言えば、髪……伸ばすのか？」
「一応…？やっぱり短い方がいい？」

肩につく髪へと手が伸ばされ、ふわりと揺れる。
指先に絡み取られ、するりと離れる指を追いかければ目を細めた豪炎寺と目が合う。

小さく頷いた豪炎寺に、少しだけ頬を染めて。伸ばしてみるよと微笑む。
豪炎寺本人も無意識だろう、周りが気が付く程度にはAの髪に触れている時間が多い。

傍から見てもAの髪を気に入っているのは明白だ。

「ほら見ろ、勉強してないだろう？」

突然、教室に響いた鬼道の声に豪炎寺とAは扉へと目を向けた。

「ちゃんと見てくださいな！ほら、広げてあるでしょ？」
「広げているからと言って、勉強しているとは言わないだろう」

全くお前は。と鬼道に窘められ、ちぇっと唇を尖らせたA。
鬼道の後ろから顔を覗いた雷門がくすくすと笑うのを不思議そうに、Aは見詰めた。

「夏未？」
「ごめんなさい、少し円堂くんを思い出したの。似たような事をしてるから」
「真面目に頑張ろ…」

流石にサッカーバカである円堂と同等はやばいと思ったのだろうか、慌てて教科書に目を通すA。

歩み寄る雷門が参考書を手にした豪炎寺へと小さく首を傾げた。

「今の所志望大学には行けそうなの？」
「判定だけなら問題ないそうだ」
「円堂と同じくらいの成績の悪さを競い合っていたのに…成長したな」
「ちょっと、鬼道さん静かに」
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