雨宿りのカクテル ページ1
今日は2月14日。
世間が色めき立つバレンタインデー。
だけど、私の予定は真っ白。
ネオン輝く不夜の町の片隅でひっそり構えるセピア色のバー。私はここでマスターをしている。
A 「雨...?」
ポツリポツリと降り始めた雨が厚いはめガラスの窓を叩く。
A「予報では言ってなかったのに」
幸い今日は客足も疎ら。早めに店を閉めようと準備を始めた途端、カランと小気味のいい音を奏でてセピア色の扉が開く。
?「今日はもう終わっちゃいました?」
がっしりした体格に外国人風の顔立ちをした青年が申し訳なさそうに尋ねる。
彼はー...。
A「え...いいえ、営業中ですけど。それより、貴方、悦利くん...?」
悦利「俺のこと知ってるの?」
A「当たり前でしょう!有名人じゃない!」
悦利くん。人気アイドルグループKA×RUのメンバーでコミカルなキャラクターで知られている青年だ。
なぜ、こんな寂れた場所に?
悦利「雨。突然降ってきたでしょう。傘持ってなくて。走って帰ろうかと思ったんだけど、ちょうどここが目について」
しっかりした肩幅、深い森のような緑色の瞳。
カッコいい、純粋にそう思った。
悦利「でも、ラッキーだったな。雨宿りもできるし、なにせこんな綺麗な人がマスターなんて」
キザなセリフもこのやたらと顔のいい男に言われると嫌な気持ちなんて微塵もしない。
悦利「おススメをもらえるかな」
A「え、わ、わかりました」
そう言われて私が作ったのはメロンボールだ。
メロンボールといえば綺麗なグリーンのカクテルだ。別にオススメではないのだが、悦利の目を見ていたら咄嗟に手が動いていた。
A「お待たせしました」
悦利「綺麗な色だね」
綺麗と言われて心臓が跳ねる。私に向けて言われたものではないとわかっていても。
悦利「これ、どうぞ」
A「え?」
悦利が差し出したのはたった今私が彼に出したカクテルだ。
悦利「知ってる?バレンタインで女の子が贈り物をするのは日本くらいなもので、海外は男が贈り物をする日として知られてるんだ。これ、俺をイメージして作った?俺の目の色と少し似てる」
A「無意識よ」
悦利「ねえ、こっちおいでよ。一緒に飲もう」
A「え?」
悦利「他にお客さんは来ないよ。ウェルカムボード裏返したから」
A「ちょっと!?何勝手に!?」
悦利「バレンタインだし、俺が貴方とこうして会ったのも何かの縁。どうか、一夜。この俺と付き合ってくれませんか?」
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作者名:しゅーま | 作成日時:2018年2月13日 9時