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.【〃】 ページ14

今回も週1頻度に……。
落ち着いたらまた1日1話を頑張り……たいんですけどね……。


.


 掛けられた白い布団から覗く手を握る。
 まだ暖かくて、脈もある。
 俺と同じように白い手は、まだ生きてた。

 口元に手を当ててみれば小さく息をしているし、脈を辿るように指を滑らせてみれば心臓が動いてる事もわかる。
 生きている事は知っているし理解できる。
 医者もそう言っているし、最初疑ってみてはいたけど無駄だった。
 自分のせいできんときが今起きないという事が起きている癖に、自分以外に矛先を向けるとか無しじゃん。
 うん、絶対無し。

 だから、今俺がきんときに起きてほしいと願う事こそが、全くの筋違いなんだよね。

 窓に目を向け海を見る。
 勝手に視界に入ってくる空からは目を逸らす。
 俺が見たいのは、こんなすぐ曇るような色じゃない。
 俺が見たいのは、照らされてきらきら光るあの色だ。

 立ち上がり、逃げるように病室を後にする。
 持ってきていた手紙は、側に居た看護師さんに「きんときが起きたら渡して」と押し付ける。



Na「……じゃあね、」

 きんとき。


..


Na「んー……、」

 大きく伸びをする。
 ほんと、どうしよっか。

 此処は、海が眼下にあるちょっと崖っぽいところ。
 吹く風が気持ちいいところ。
 耳に響くような小波の音がするところ。
 …………海と空が、ぴったり2つに分かれて見えるところ。

 きんときの見舞いに行った帰り道のついで。
 横断歩道は左右をよく確認して。
 ふらり立ち寄ってみたのが、此処。
 忘れてたけど、きんときと付き合う前の"元"俺のお気に入りの場所だった。
 俺ときんときの目と同じ色が一緒に見れるからとかいう馬鹿みたいな理由。
 でもそんな単純な理由だからこそ、よく通ってた。
 ……まさか、別の心持ちでまた来るとは思ってなかったけど。
 なのに目的は同じとか、笑うしかない。

 あーあ、どうしよ。
 俺がこんな決断すらできない腑抜けだとは思わなかった。
 早く決められないのに、きんときのとこにどうしようもなく通い詰めてるからこうなってる訳だけど。
 何がしたいんだか、自分ですらよくわかんない。
 今してる事も、今しようと思ってる事も。

 崖の先の方に座り込んで、端に手を付き下を向く。
 ただ立ったまま眺めてるよりずっと近くに海が見える。
 で、ずっと遠くに空が見えた。


.

.【〃】→←.【〃】



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音猫 - .....凄すぎる...神作品すぎますね.....設定が神がかりすぎてて、文才ずば抜けてて、え..?貴方は神ですか?() (2022年6月17日 21時) (レス) @page17 id: 2d3bbad919 (このIDを非表示/違反報告)
珠利(プロフ) - yuimaさん» コメントありがとうございます。私も好きなんですよねぇこういう感じの (2019年11月16日 8時) (レス) id: 31e70f28a3 (このIDを非表示/違反報告)
yuima(プロフ) - こーゆー意味深のお話好きなんすよねぇ (2019年11月16日 7時) (レス) id: 4ca92fa544 (このIDを非表示/違反報告)
珠利(プロフ) - 黒歴史を知っている人さん» コメントありがとうございます。そしてその数年後が末恐ろしいですね…… (2019年10月17日 6時) (レス) id: 31e70f28a3 (このIDを非表示/違反報告)
黒歴史を知っている人 - とても良かったです。ただ数年後にこれを自分で見たら目の前が真っ暗になりますよ…… (2019年10月17日 4時) (レス) id: 81037a3ae4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:珠利 | 作成日時:2019年10月12日 17時

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