スピンオフ『母は強し』 ページ49
麗らかな日差しが差し込む森。
ここは狼王ヴォルが治める西の森である。
雌牛「今日は天気も良いし少し遠くまで散歩しようかしら。お腹の子も気分が良くなるでしょう」
ロックスが散った先の戦から数週間。ガイウスも森から去り、落ち込んだ気分を少しでも上げようと雌牛ことサラは歩き出した。
彼は自由の為咆哮を上げ、そして散った。
最高に格好いい夫であり腹の子の父じゃないか、私はそれをこの子に伝えられればそれで良い。
それが良い。
そう思いながら歩いていると背後から声をかけられる。
ヴォル「何か考え事か?」
サラ「ええ、私は最高の夫と巡り会えたのだなって」
ヴォル「ああ、ロックスは誇り高き我らの英雄だ。」
サラ「でしょう?そんな英雄を夫に持てて私幸せ者だわ」
ヴォル「だな。そういえば最近また人間共がなにやらきな臭い動きをしているらしい。散歩に出るならサラも気をつけろ。」
サラ「ご忠告ありがとう。けど私は英雄の妻で英雄の子の母よ。そう簡単にはやられないわ」
ヴォル「それもそうだ。じゃあ俺はもう行く。またな。」
サラ「ええ、またね」
狼王と別れ、更に歩みを進める。
本当に良い天気だ。
しかしいつもなら心地よく聞こえる筈の小鳥たちの歌が聞こえない。
サラ「おかしいわね。けどたまには静かな日もあっていいものね。」
森の外れの沢まで来たところで水を飲み、腰を落ち着ける。
そうすると、腹の子の胎動が感じられ胸が暖かくなる。
嗚呼、あの牛(ひと)との子が私に宿ってる。
風で木の葉の擦れる音と沢を水が流れる音が心地好い。
しかしそんな幸せなひとときは人間の叫びによって破られた。
男A「おい!こんなとこに牛がいるぞ!」
男B「丁度良いな、捕まえろ!!」
その男達の手にはキラリと光る猟銃があった。
サラは突然の人間達の襲撃に驚きの声をあげたが、すぐに冷静さを取り戻し対峙する。
サラ(ここから沢を渡り逃げる?いや、身重な私じゃ渡ってる間に捕まえられるわ!普通に走っても銃に撃たれてしまう...。叫んでヴォルを呼ぶ?きっと間に合わない。頼れるのは私だけ、お腹の子は私が守るのよ!!)
男B「ん?こいつ腹がデカイな。子供がいるのか?」
男A「そういや知り合いの牧場主が牛が足りねえって言ってたな、そこに売り飛ばすか」
男B「そりゃあいい!工場に売っ払うよりは儲けがいいぜ」
それを聞いてサラはある事を閃いた。
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不登校の自殺志願者 - コメ欄から来ちゃいました!!いやぁー凄いですよね。めちゃくちゃ続いてる。私が見た時は500コメ超えてました。 (2019年5月15日 11時) (レス) id: fed8378344 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:コメ欄の作者達 | 作成日時:2017年8月17日 22時