ドナドナ (ページ19)

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続きページ19

『我々は有史、人間による牧畜が始まって以来、常に人間の支配下にあり、そして生を作られ、その生を捧げてきた！だが、その人間どもの身勝手な生の回転作業の上に、何の意味があったか！

この血肉を食物連鎖の外側、欲求を満たす為だけの娯楽、余興に使われることに我々の意志があったか！いや、そんなものは存在しなかった！

世界中の牛達よ、聞け！私は今、ガイウスというかつての友をこの手にかけた！彼は勇猛果敢な闘牛であったが、その彼ですらその精神を人間どもの欲求に隷属させるしかなかった！

私は、人間に飼い慣らされてしまった、その象徴たる彼を殺すことで、その罪を被ることで、

これを、人間たちへの宣戦布告、

闘牛として、食用肉として倒れてきた全ての先牛(せんじん)達への鎮魂、そしてこれより先を生きていく我ら自由牛の、魂の解放、肉体の自由の象徴としたい！

さあ、奮い起て！怒れる牛達よ！

我ら一丸となって、人間どもに立ち向かうときが来た！

奴等が振り回す赤い布を、奴らの血で更に真っ赤に染め上げる！出刃包丁より鋭い我らの角で、奴らに我々と同じ苦しみを味わせる！

いまこそ、復讐の時！

いまこそ、解放の時！

その飼い慣らされた心の中に、一条でも自由への希望があるのなら、

偶蹄目の旗の下、一塊の弾丸となって、不条理を打ち破るために戦うのだ！』

ーーーその日。

世界中の牧草地が、割れんばかりに震えた。

第19章世界の中心で自由を叫んだ雄牛

※後章数訂正
第17章血戦の果てに
次回第18章世界の中心で自由を叫んだ雄牛