【弐】桜と蝶の邂逅 ページ9
桜士郎と耀哉がある程度、墓参りを済ませた所で、耀哉はまるで、霊園の構造を把握しているかの如く、桜士郎に道案内をする。
桜士郎は何故道案内をする必要があるのか不思議に思うが、断る理由は無いためそれに従う。
暫くすると、少し開けた空間へと出る。こんな場所が……。桜士郎は他とは一際大きな墓の密集している空間に、感嘆の息をもらす。
不躾なのかもしれないと、桜士郎は心の中で謝罪しながらも、綺麗に手入れされた見るからに艶やかな墓石の数々を見回す。
「桜士郎、こっちに」
気がつくと、耀哉は少し離れた所に佇んでいた。桜士郎はそのことから自分の悪い癖が出たことを反省する。
桜士郎の“癖”とは、集中すると周りが見えなくなることである。彼の趣味が読書なのは、彼が元来、知的好奇心また知的探究心が強いからだ。彼は何か気になることがあると、必然的に周りが見えなくなる。
彼自身、昔散歩に出たきり、一日中歩き回っていた過去を持ち、現蟲柱であり、年下の胡蝶 しのぶに説教をされた経験があった。
つまり、桜士郎のその癖は、何時もなら羨ましがられる長所となるが、護衛などの時には短所へと変化してしまうのだ。
「申し訳ありません。見たこともない美しい空間だったので」
「いいや、構わないよ。そうだね、ここは殉職した柱の墓だからかな。他の子たちと区別は余りしたくなかったんだけど、彼らは人一倍、人々を救ってきたからね」
桜士郎の謝罪にも、耀哉は全く気にしていない口ぶりで視線を一つの墓石に向ける。
つられて桜士郎もその墓石に視線を向ける。途端、桜士郎は目を大きく見開き、その目は微かに震えていた。
その墓石に刻まれていた名は【胡蝶 カナエ】。
生前、桜士郎とは大分仲の良かった隊士だった。
「……なん、で」
「桜士郎は墓参りをする機会がなかったと思ってね。余計なお世話だったかな？」
耀哉は心配そうに彼を見つめる。桜士郎は黙って首を振り、耀哉を真っ直ぐ見た。
「余計なお世話なんて有り得ません。貴方様のお気持ち、とても嬉しく感じます。ですが────私には彼女を、カナエを弔う資格がありません」
「……どうしてかな」
「私が、私こそがカナエを殺したも同然なのですから。しの……胡蝶にも合わせる顔がありません」
桜士郎は酷く辛そうにそう告げた。
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天霧(プロフ) - とても面白かったです。ハールメンで見させて貰います。 (2021年9月26日 1時) (
レス) @page17 id: 8490818b21 (このIDを非表示/違反報告)
しとは(プロフ) - いおりさん» 前作からと長々この作品をご閲覧頂きありがとうございます！部活の大会や模試などが立て込み、中々更新出来ずにすみません。ですが、これからも応援して頂けると嬉しいです。よろしくお願いします！ (2020年1月16日 7時) (レス) id: 076c798201 (このIDを非表示/違反報告)
いおり - 前作から来ました。今作もすっごい面白い、、、。これからもお体に気をつけて更新頑張ってください。楽しみに待ってます。 (2020年1月13日 17時) (レス) id: 74a65ddbfb (このIDを非表示/違反報告)
しとは(プロフ) - そう言って貰えると、良かったぁってなります。ありがとうございます！了解です。前作は残していく方向で行きます！更新頑張ります！ (2020年1月5日 11時) (レス) id: 076c798201 (このIDを非表示/違反報告)
Sara．(プロフ) - 面白すぎて一目惚れしました。大好きです前作残して欲しいですす更新頑張って下さいぃぃ！ (2020年1月4日 23時) (レス) id: 37e203d48e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しとは | 作成日時：2019年12月12日 1時
