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そんな彼であるのだが、彼自身すらも知り得ないような深層の部分に被虐趣味を持っているのである。別に誰からの暴力でもいいというわけではない。愛のない暴力では意味がない。彼が受け付けるのはただひとつ、婚約者であるヴィオレッタ・パドローナからの「躾」だけである。彼女の「躾」と称した鞭打ちを受けている間、彼は苦悶の中で無意識に口角をあげ微笑んでいるのだ。
しかし、前述した通り本人はこの趣向に一切の自覚がない。と、言うよりもこのようなことで喜びをおぼえるなどということを彼の高いプライドが許しておらず、絶対に認めようとしないという方が正確である。故に彼はこの「躾」を口ではかなり嫌がっており、周囲から本当は喜んでいるんじゃないかと指摘されるたびに全力で否定しにかかる。
この婚約者との関係性については当然よく思わない者も多く、似た顔立ちから風評被害の行きやすい双子の兄には相当いやな顔をされているし、婚約者と出会う以前の彼に懐いていた末の妹には「どうして!?」と叫ばれた。しかし彼はその趣向を絶対に認めようとしないため、言い合いは永遠に平行線。
かなり義理堅い人物であり、愛した人にはその身が朽ち果てるまで尽くし続けるという強い覚悟を持っている。その愛した人とは血の繋がった家族と婚約者である。彼らに害を与えるものは何人たりとも許さず、本来であれば地獄の底まで追いかけて八つ裂きにするくらいの心づもりではあるのだが、自分がそういった行動をとることによって当の愛する人たちにかかる迷惑を考慮し勝手に復讐を行うなどと言ったことはない。その代わり聖女を擁する公爵家の権威を存分に利用し、戦闘訓練などの組み合わせを無理やり変えさせることによって正式な形で復讐の一撃をお見舞いする。飼い主の名に決して泥を塗らない、躾の行き届いた番犬。
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作者名:白銀刹那 | 作成日時:2022年10月16日 22時