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外に出ると17時のサイレンが鳴っていて、薄暗くなりはじめた、まだまだコートの手放せない寒空の下、告別式ぶりに中村さんに顔を合わせた。
「お疲れ様。」
その言葉はここ数日通夜や告別式でバタバタと落ち着かない毎日を過ごしていた私への労いの言葉だった。
木製のベンチに腰を下ろしていた中村さんの隣に体重を預け、「お通夜に来てくれてありがとうございました。」と、身体の向きを中村さんの方へ向けて頭を下げた。
「健やお母さんは、どう？大丈夫そう？」
「兄は今日から仕事に出ていますし、母も看病の方が大変だったと思うので、ある意味では解放されたのかもしれません。」
「Aさんは？」
下の名前で呼ばれるようになったのはつい最近の話で、どうやら兄と私が一緒にいる場面では私のことをAさんと呼び、そうでないときには佐藤さんとずっと呼んでいたらしかった。
「下の名前で呼ぶのって馴れ馴れしい感じがして気がひける。」なんて言った中村さんのことを相変わらず私は中村さんと呼ぶのだけれど、それこそ恥ずかしくて下の名前では呼べそうもなかった。
「私も肩の荷が降りたというのが正直な気持ちかもしれません。」
すーっと息を吸うと冷たい空気が肺に入り、腑に沁みた。
「父が衰弱する姿も、母の疲弊する姿も、私達兄弟を悩ませましたから。まだ父が若いのもあって、本当は化学療法も受けて欲しかったんですけど、頑固者で。」
もう涙は出なかった。薄情な娘だろうか。
「お疲れ様。」
もう一度、中村さんの口から労いの言葉をかけられて、日常に戻ってきたことを実感した。
「気分転換になるかどうかはわからないけれど、少しお酒でも飲まない？」
「近くに行きつけの居酒屋があるんだ。」と続けた中村さんの顔が街灯に照らされていることで、既に公園が闇の中にあることを知った。
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黒尾(プロフ) - ちぇりー、さん» コメ、Twitterフォローありがとうございます。もう一捻り、とは思います。最後までお楽しみいただければ幸いです。 (2019年9月28日 8時) (
レス) id: 68c099bb5b (このIDを非表示/違反報告)
ちぇりー、(プロフ) - 初コメです。黒尾さんの描く物語はとても大人で、どこか現実味のあるような、でもどこか心が救われるようなそんな言葉ばかりでとても惹かれました。Twitterもフォローさせて頂きました。続きを楽しみにしています！ (2019年9月28日 0時) (レス) id: 14c95c5e08 (このIDを非表示/違反報告)
黒尾(プロフ) - ちびすけさん» いつもありがとうござます。ありがたいお言葉に救われます。あと数時間お待ちくださいね。 (2019年9月27日 17時) (レス) id: 68c099bb5b (このIDを非表示/違反報告)
ちびすけ(プロフ) - 黒尾さんの紡いだ言葉、心して読ませていただきます。黒尾さんの言う豪雨…こんなかな？あんなかな？と想像しつつ、待たせていただきます！ (2019年9月27日 16時) (レス) id: a303121135 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：黒尾 | 作成日時：2019年9月12日 21時
