紅葉の問い ページ37
(続)
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この街の闇を統べる、美しきマフィアの女幹部。
その存在感と威圧感を、画面やページ越しではなく、実際に感じた優花は冷や汗を流す。
「息災じゃったか?わっちがどれほど其方を案じ、胸を痛めたか。・・・このような______獣畜生共の下にそなたを残す事になって」
鏡花に微笑んだ後、倒れた敦に近寄ったと思った途端、紅葉は彼を尖ったヒールで踏みつける。
「じゃがわっちが扶けに来た。もう心配は要らぬぞ」
紅葉が持っていた携帯を閉じると、夜叉白雪は何もなかった様に消えた。
「何故、貴女が電話を・・・」
「簡単じゃ。この小童が云う業者とやらを、刺して吐かせただけの事」
『ッ・・・!止めて下さい!!』
激痛に呻き声を上げる敦を助けようと、優花はそれを突き飛ばした。
「そなたは・・・」
『えっ・・・』
優花を一目見て、紅葉はそう云い少し目を見開く。
だが、今の彼女にとって最優先なのは鏡花らしく、視線は直ぐ其方に向けられる。
「もう何も思い煩う事は無い。わっちが守ってやろうぞ」
その言葉に対し、敦は叫ぶ。
鏡花はもうマフィアには戻らない、彼女の力は探偵社の仕事で振るわれるものだと。
その言葉に、紅葉は涙を流す。
「矢張り・・・鷗外殿の許可など待たず迎えに来るべきであった。このような欺瞞と偽善の巣にそなたを一秒も置いてはおけぬ」
彼女は鏡花を優しく抱きしめる。
まるで、母親が何かに怯える子供を落ち着かせるような・・・守るような抱きしめ方。
そんな紅葉の様子に、優花と美月は改めて彼女がどれほど鏡花のことを思っているか、理解する。
だが鏡花は光に憧れている。
彼女の望みを叶えるためには、紅葉から離れて逃げなければならない。
簡単ではないが、自分達の異能を使えば可能だろう。
優花と美月がそう考えて視線を合わせ、頷いたその直ぐ後だった。
「可哀想にのう・・・鏡花も・・・お主も」
『・・・私?』
紅葉の目が、困惑した表情の優花を捕らえる。
「そうじゃ『黒子』。確かに生きて此処におるのに、戸籍が無い事で社会から存在しない者として扱われる」
『・・・』
「手を差し伸べてくれる者がおっても、暗殺に向いたその異能があるのじゃ。其処はさぞかし居ずらかろう?」
白き心を持つ黒き少女は、紅きマフィアの問いには答えず目を瞑る。
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ただの本好き(プロフ) - 番外編を作りました。宜しければリクエストご応募下さい! (2019年2月18日 16時) (レス) id: 1d708256dc (このIDを非表示/違反報告)
Toua(プロフ) - 私は太宰さん!あと、ドストエフスキーさんとか、中也も大好き!賢い所とか強い所に惚れちゃったです(////∧////) (2018年12月5日 0時) (レス) id: 704eb57210 (このIDを非表示/違反報告)
ただの本好き(プロフ) - Touaさん» お返事遅くなって申し訳ございません・・・!そうですね、文ストのキャラは皆魅力的なのでとても迷いますが・・・選ぶなら新旧双黒ですね。あの四人のやり取りが面白くて好きです。Touaさんは? (2018年12月4日 19時) (レス) id: 1d708256dc (このIDを非表示/違反報告)
Toua(プロフ) - ただの本好きさん» 確かに、双黒の戦闘シーンとかは最高ですね!ただの本好きさんの推しは誰ですか? (2018年12月3日 21時) (レス) id: 704eb57210 (このIDを非表示/違反報告)
ただの本好き(プロフ) - Touaさん» 私は全部好きです。アニメでは確かに漫画や小説ではある所が省略されてしまうけど、声があるし戦闘シーンでは絵や文章では味わえない迫力がありますから! (2018年12月3日 20時) (レス) id: 1d708256dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ただの本好き | 作成日時:2018年11月4日 14時