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「田中君、利用者さんの前では
できるだけ笑顔でね。」
結局最後の講義までぶっ通しで眠り続け
気づいたころには講義室には誰もいなかった。
慌ててボランティア先の施設へ向かうと
呆れ顔の職員に注意されてしまった。
「俺、こういうの向いてねえんだよなぁ。」
就活に有利だからという理由で入ったサークル。
ボランティア、ましてや介護施設で老人を相手するなんて
俺に一番向いていないものだ。
「あっ、」
「ああ、拾いますよ。」
ホールに出たタイミングで
窓際に座っていた車椅子のおじいさんが
一枚の紙を床に落として、手を伸ばし拾おうとしていた。
駆け寄って拾い上げるとそれは写真で
写っている男性に違和感を覚えた。
「あの…」
「ああすいません、はいどうぞ。」
写真に写っていた男性は
一人で写っているのに何故か右に寄っていて
まるで隣に誰かがいるような視線を送っていた。
「お孫さんですか？」
「…いや、俺の若い頃の写真だよ。」
男性の言葉に首を傾げる。
彼が持っているのは、写真と言ってもチェキで
最近発売されたものだという事が
左端に印字されたロゴを見れば一目でわかる。
その時ふと、施設の説明を受けた時
認知症が進んでいる人もいると言っていたことを思いだして
否定するのも気が引けて話を合わせることにした。
「日本万国博覧会の開催初日に運よく行けてね
その時の写真なんだ。」
心臓が止まりそうになった。
写真をよく見ると、日本万国博覧会開催と大きく書かれた文字が
男性の頭上にでかでかと写り込んでいた。
「年を取るっていうのは嫌だね。」
「え？」
「そこに誰かと行ったはずなのに覚えてないんだよ。
このネックレスだって、オーダーメイドして
誰かにプレゼントするために包装までしてたのに
誰にあげようとしたのか…。」
男性が握りしめるネックレスには
黒い宝石が光り輝いていて
その手はかすかに震えていた。
「昔、俺は自分の欲のために人を傷つけてしまった
だからこの年までずっと独身で
お見舞いに来てくれる人だっていない
おまけに覚えていないことだらけで。」
奇妙なチェキを見つめながらそう呟く男性は
弱々しく、絶望に満ちた瞳をしていた。
「自分のしたことは必ず返ってくるって
本当なんだね。」
明らかに誰かを見つめる写真の中の男性。
隣にいるはずのあなたは、誰？
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あかね(プロフ) - とっても面白かったです！良かったら解説お願いします！ (2022年1月31日 1時) (
レス) id: 608a572f89 (このIDを非表示/違反報告)
ぽめじろう(プロフ) - coccoさん» ありがとうございました！そうなんです、名前を変えて暫くはこちらでお世話になることになりました！また読んでいただけて嬉しいです！ (2021年12月27日 8時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
ぽめじろう(プロフ) - hohoさん» 読んでいただきありがとうございました。暫くはこちらのアカウントで書きますのでよろしくお願いいたしますm(_ _)m (2021年12月27日 8時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
ぽめじろう(プロフ) - ハルさん» 初めまして！読んでいただきありがとうございました。楽しんでいただけて嬉しいです！ (2021年12月27日 8時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
cocco(プロフ) - 読み進めていくうちにどんどん引き込まれていく感じがぱぐたろう様に似てるな〜と思っていたらまさかのご本人様でした… ; ; ぱぐたろう様ロスだったので今作に出会えて嬉しいです。おかえりなさい！であってるかわかりませんが言わせてください！おかえりなさい！！！ (2021年12月25日 2時) (レス) @page42 id: 4774ec4c1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぽめじろう | 作成日時：2021年12月21日 21時
