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「本当は答え合わせは、試験が終わった直後にやるのがいいのだけれどね」
と、相川。
「まあ、今のAちゃんにそこまで求めるのは酷だよね……でも、それなりの点数が取れているじゃない。自分で教鞭をとっておいてなんだけれど、ちょっと意外だよ」
「意外か」
「うん。Aちゃんにしては面白くもなんともないオチだね」
「私は笑いを取りたくてお前に勉強を教えてもらったわけじゃないんだよ！」
「てっきり、『あんなに勉強したけれど、いつもよりむしろ点数は悪かったです』的な展開になると期待していたのに、ある意味がっかりだよ」
「そんな展開を求める方がよっぽど酷だ！」
「へえそう」
とか言って。
相川は、ぽん、と私の脚の上に手を置いた。
太ももの辺り。
…………？
何やってんだ、こいつ。
そう言えば、ジープと言ってもこのクルマはそんな大きな車体ではないから、こうして後部座席に並んでいると、相川と私は、結構、かなり近い距離になってるんだよな……。
言うなら、カーブでクルマが傾けば、それで身体が触れ合ってしまうくらいには。
だからと言って、自ら身を乗り出して積極的に太ももに触れてこられても、こちらとしては挨拶に困るのだが……。
「でも、本当に大したものだよ。褒めてあげる」
当の相川は、まるで構わず、右手のその動きは全く自分の管轄外であるかのように、それまで通りに会話を繋げる。
こいつはどうして、こうも表情が変わらないんだ。
よくできたお面でも被ってるんじゃないのかと思わせる。
「僕が人を褒めるなんて滅多にないことだよ。前に人を褒めたのはどれくらい前になるかな。
そうだね、小学六年生のとき、隣の席の子がオセロで三連勝していたときかな」
「本当にかなり前だし、しかもそれにしてはそんな大したことじゃないところで褒めてるな！」
「嘘だよ」
「まあ、嘘でしょ……」
「でも、僕が人を滅多に褒めないのは、本当」
「うん……それはわかる」
「とはいえ、今回にしたって、遠回しに自分のことを褒めているのだけれどね。
Aちゃんみたいなお馬鹿さんをそこまで教導できた自分自身を、とっても誇らしく思うもの」
「…………」
まあ。
一応、それも、事実は事実。
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作者名：灰猫 | 作成日時：2022年7月24日 23時
