Q35:まやかしの心 ページ36
「……赤司くん、ここ少し違うかな。ここの問いは、引っ掛けだからここをこうして……」
私は言いながら、公式を少し直す。
けど、ほとんど1人でやってしまうので、私は実質修正するだけ。
赤司くんは新しい式を見ると、少し考えてから問題を解いていく。
「あ……確かに解きやすいですね」
「でしょ?今の解き方も悪くないけど、テストのときはそっちの方が早く済むよ」
「そうですね」
赤司くんはそう言って微笑む。
私はカップにお茶を注ぐ。
「先輩は教えるのが上手ですね」
「そうかな?」
「とてもわかりやすいです。どなたかに、教えたこととかは?」
「ないよ?赤司くんが初めて」
私が呟くと、赤司くんは一瞬だけ目を大きく開いた。
けど、その顔はすぐに反らされる。
「……そんなこと言われると、誤解されますよ」
「誤解?」
どういうことかわからず、ポットを置いて赤司くんへ顔を向ける。
すると、耳が少し赤いのが目に入った。
私は赤司くんのそばへ行くと、その頭に触れた。
「先輩?」
「……何を考えてるか、知らないけど……私は安易に人を家に上げないし、勉強も滅多には教えない。虹村くんは、家の事情があるから……たまに勉強を見てるけど……」
「教えてるんですか?」
「ワンツーマンじゃないよ。ワンツーマンで教えたのは、赤司くんだけ」
私は肩を竦ませる。
赤司くんの顔が動きそうなのを察したから、思わず、赤司くんの背中におでこを付けてそれを回避する。
「先輩?何してるんですか」
「……なんとなく」
「なんとなくって、汗臭さとか」
「シャワーは?」
「一応、浴びてますが……」
「なら平気。赤司くんが嫌?」
私が呟くと、赤司くんは少し複雑そうに息をついた。
怒られるかな?と不安に思っていると、背中に手を乗せられる。
「先輩。俺は後輩でも、男です。先輩にその気がなくても、襲われたら文句は言えませんよ?」
その言葉に、私はハッとして赤司くんから離れた。
確かにそうだ。
先輩後輩とはいえ、私達は男女……。
私は赤司くんに顔が見られないように背を向けた。
「ごめん。迂闊だった……さっきの問題、覚えてるよね。それを踏まえて、問い5までは行けるからやってみて。私は夕飯の支度するから」
私はそう言って、部屋を出る。
なんとなく恥ずかしくて、部屋に居ずらい。
赤司くんが男の子なのは、わかりきってたことなのに……なんで?
(私、まさか……いや。赤司くんは後輩。この気持ちはきっとまやかしだ)
5人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:アマユリ | 作成日時:2021年11月20日 16時